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生薬を改良した薬

[2022.11.20]

本日は生薬と現代の医薬品の関係についてのお話です。

糖尿病治療薬のひとつであるメトホルミンは、中世ヨーロッパで糖尿病症状(口渇・多尿)を緩和するために用いられていた,民間薬ガレガソウが出発点とされています。20世紀初頭にこのガレガソウからグアニジンが抽出され,血糖降下作用が確認されました。しかし、グアニジンは毒性があるため糖尿病治療薬としては使えませんでした。戦後になってグアニジンを2個結合させることで,安全性を高めたビグアナイド系化合物(bi-guanide)が誕生しました。ビグアナイド化合物にはフェンホルミン,ブホルミン,メトホルミンが使われていましたが、その中でもっとも水溶性で乳酸アシドーシスの合併症が少ないメトホルミンが広く使われるようになって現在に至ります。そして昨年、メトホルミンのシングルステップの化合物としてイメグリミンが登場したという流れになります。イメグリミンはメトホルミンの作用機序にプラスして、食後のインスリン分泌増強、食後血糖低下作用を併せ持つ不思議な化合物で、日本人の2型糖尿病患者に特に有効であると推測されています。

もうひとつ、SGLT2阻害薬は、リンゴの樹皮に含まれるフロリジンを改良して合成されたものです。漢方の生薬は草の根っこの部分が一番多いのですが、次に木の皮がよく使われます。シナモンコーヒーに使われるシナモン(桂皮)も樹皮を用います。

フロリジンは19世紀には腎臓に働いて尿糖を排出する作用があることが分かっていました。フロリジン骨格を維持したまま、毒性を減らし内服可能にし、現在のSGLT2阻害薬となりました。

このように、もともとは生薬として利用されてきたものが、改良・発展してきて西洋薬として使われている例は、センノシドやウルソ、ジギタリス製剤など多数あります。このことからも、生薬を基本とした漢方医学と西洋医学は対立するものではなく、漢方医学の延長線上に現代医学があると思っています。

 

 

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