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91竹筎温胆湯と92滋陰至宝湯

こじれた風邪で痰を伴う咳が続く場合は90清肺湯を使うことが多いですが、清肺湯とよく似た処方で、91竹筎温胆湯(ちくじょ・うんたんとう)と92滋陰至宝湯(じいん・しほうとう)という漢方薬があり、使い分けのコツがあります。この2つの製剤について説明します。

91竹筎温胆湯はその他の通り竹筎を含んだ処方ですが、竹筎とは写真のような竹の皮のことです。清肺湯には8つの鎮咳去痰の薬が入っていると説明しましたが、竹筎はそのうちの一つでもあります。そのほか、咳止め生薬としては、麦門冬と半夏、桔梗が入っています。麦門冬は代表的な潤す咳止め薬で、半夏と組み合わせて効果を増強します。次第にのどにこみ上げてきて喉がいがらっぽくなって我慢ができなくなってせき込んでしまうような、気逆を伴う咳に有効です。黄連と柴胡の組み合わせが肺の炎症を静めます。人参、茯苓、甘草の組み合わせは四君子湯の方意があり、気虚(疲れ切ってガソリンが切れたような状態)に有効で、香附子(ハマスゲ)は気の流れを良くします。竹筎温胆湯の温胆ということばは、胆嚢を温めるとよく眠れると昔考えられたことに由来します。効能効果は、咳が続いて安眠ができない場合に使うと書かれています。

92滋陰至宝湯も麦門冬が入ります。麦門冬は90清肺湯、91竹筎温胆湯、92滋陰至宝湯のどれにも入っており、この系統の処方に中心的な役割を果たしております。麦門冬のほかに咳止めは、貝母、地骨皮があります。地骨皮(じこっぴ)は枸杞(クコ)の実の根っこの部分であり、肺の炎症を鎮め、咳止めの薬効があります。そのほか、柴胡、芍薬、当帰、薄荷、茯苓、蒼朮、甘草を含んでいるのですが、これは漢方をやっている方なら気が付くかもしれませんが24加味逍遥散がそのまま入っています。滋陰至宝湯の効能効果は、体力が衰えている人の慢性の咳や痰、微熱が続く時に用いられると書かれていますが、精神的なイライラにも効果があります。咳が慢性化すると精神的にも焦りやイライラにつながりやすいので、そのような状態に適しています。滋陰至宝湯にも香附子が入っており、気の流れをよくします。

91竹筎温胆湯や92滋陰至宝湯はこのように見ていきますと90清肺湯の関連処方であり、清肺湯の効果が乏しい症例に2番手で使うことがあります。90/91/92はいずれも明の時代につくられた万病回春という本にはじめて引用されている処方です。91は咳がひどくてよく眠れないような状態、92は長く続く咳で精神的に参っているような状態につかうとよいと考えています。

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