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コレステロールが高いと何が悪い?久山町スコアを解説します

                 福岡県久山町の風景

男性で肥満傾向のある方は、一般的にコレステロール値が高くなりやすい傾向があります。女性も、50歳を過ぎて閉経を迎える頃から、卵巣から分泌される女性ホルモンが急激に減少するため、体重にかかわらずコレステロールが上がりやすくなります。実際、標準体型の女性でも、健診で「コレステロールが高い」と指摘されるケースは少なくありません。

中でもLDLコレステロール(LDL-C)は、いわゆる「悪玉」とされ、長い年月をかけて血管壁に入り込み、動脈硬化を進め、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクを高める要因となります。

ただし、LDL-Cの値が高い=すぐに危険というわけではありません。動脈硬化はLDL-Cだけで起こるものではなく、血管の状態、炎症、糖代謝、喫煙歴、遺伝的背景、年齢など、さまざまな要因が関与します。

そのため、LDL-Cはあくまで一つの指標であり、「この数値だけで心筋梗塞のリスクが決まる」といった絶対的なものではありません。実際のリスク評価には、年齢、性別、血圧、糖尿病の有無、喫煙歴などを総合して判断する「リスクスコア」を用いることが一般的です。

LDL-Cを下げるお薬の王様が、スタチンというお薬です。現在よく使われている薬として、アトルバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチンなどがあり、LDL-Cを平均40%程度低下させるお薬です。スタチンは日本では1989年に最初に発売されておりますので、30年以上の歴史があり、外来で医師が管理して使用する分には、効果や安全性の高いお薬です。しかし、動脈硬化のリスクを軽減させるという薬の性質上、いったん飲むと決めたら、長期にわたって内服することが必要です。

動脈硬化のリスクには、コレステロールのほかにも糖尿病、高血圧、喫煙などがあり、そのほかのリスクがない場合、スタチンを飲んだほうがよいのか、悩んでいるかたも多いのではないでしょうか。

このような場合に、動脈硬化性疾患発症予測ツールが有効です。

動脈硬化性のイベントを起こす可能性を、クラウド上で計算できる

久山町スコア計算ツール

これは一般に公開されているアプリで、ボックスに年齢、性別、LDL-C, HDL-C, 血圧の上の値や喫煙の有無などを入力しますと、10年間の動脈硬化性疾患の発症確率を計算してくれます。動脈硬化性疾患とは、冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症)と脳梗塞のことです。コレステロールが高いというだけでは無症状で、実際にイベントを起こす確率を知ることの方が大事です。福岡県久山町では、1988年から40歳以上の町民2454名を約24年間追跡調査し、心筋梗塞や動脈硬化による脳梗塞の発症率を調査したのです。このデータベースを使って、目の前の患者さんと同じ年齢で、同じような検査値を持っている方は、10年間にイベントをどれぐらい起こしたのかがわかっており、多変量解析の手法を用いてリスクを計算できるのです。

この計算を始める前に、糖尿病がある場合、高リスク(リスク10%以上)となるため、自動的にスタチンを開始したほうが良いという判定になることに注意してください。このスコアを使えるのは、動脈硬化のリスクを大きく上げる糖尿病や慢性腎臓病がない方で、コレステロールが高値でイベントリスクを計算したいときです。

リスクの評価方法

このリスクの数字が

1-2%の場合、 低リスク

2-10%の場合、 中リスク

10%以上の場合、 高リスク

と評価します。低リスクの患者さんは、スタチンを飲むことで得られるメリットが比較的小さく、スタチンを飲まなくてもよいと説明しています。高リスクの患者さんは、スタチンを飲んだほうがよい、と強く勧めます。中リスクの患者さんには、患者さんごとに相談の上、方針を決定します。スタチンの内服は長期にわたるものなので、内服するか決めるうえで大事なことは、患者さんごとにイベントを起こす可能性をあらかじめ説明したうえで、患者さんが納得して意思決定をしてもらうことです。

このスコアでは、LDL-C 180mg/dLを超えていても、血圧やHDL-Cなどが大丈夫で、喫煙がない女性では、50歳を超えていても多くの方は低リスクに分類されています。10年間でイベントを起こす可能性が2%以下なら、スタチンを飲まなくても、食事療法だけでも十分ではないでしょうか。当院では、スタチンの開始時にイベントリスクを計算して、患者さんごとに最適と考える治療のアドバイスを行っております。

 

 

 

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