漢方薬に副作用はあるのか
西洋薬は強い薬で効果は高いけれど副作用がある。漢方薬は自然治療なので、効果は弱いけど副作用がない。こんなイメージを漢方薬に持っている人は多いです。でも、漢方薬にも副作用はあります。
もっとも有名な副作用が甘草によるグリチルリチン過剰のための偽アルドステロン症、歴史的に重要な副作用が小柴胡湯による間質性肺炎です。
ツムラ128製剤のうち、90処方以上に甘草が含まれております。甘草は中国で主に栽培されている薬草ですが、塩分をため込むホルモンであるアルドステロンのような作用をすることがあり、高血圧や低カリウム血症などを引き起こすことがあります。
小柴胡湯による間質性肺炎ですが、1989年に報告され、慢性肝炎の治療のため小柴胡湯を投与されていた患者のうち88名に間質性肺炎が発症し、10名が死亡したと発表されました。当時慢性肝炎に対しては有効な薬がなく、100万人に小柴胡湯が継続投与されていたとも言われており、漫然とした小柴胡湯の継続がアレルギー性の間質性肺炎を引き起こしたと考えられました。現在、小柴胡湯の添付文書は赤字で警告文が記載されており、非常に使いにくい薬剤になっております。
漢方薬に限らず、内服薬はすべて副作用が起こりうるものです。現在市場に出ている高血圧や糖尿病の薬などは歴史的に多くの人が内服していて安全性はかなり高いと思われますが、それでも副作用は起こりうるものです。そのため、毎回の診察で直接お会いして、「何か変わったことはないですか」と体調の変化を把握するように努めております。
漢方薬は薬局でも医師の診察なしにOTC薬として購入することができますが、厚生労働省の基準では比較的副作用が少ないとされているため第2類医薬品という扱いで、薬剤師でなくても登録販売者であれば販売が許可されている、という扱いになっております。
基本的に漢方薬は安全な薬であると思いますが、100%安全ではありません。内服をしていてなにかおかしければ服用をやめてもらえば、基本的には安全な薬です。
空咳がでたり、足がむくんだり、漢方を飲んでむかむかするなど、なにか変だなと思ったら、漢方の服用を中止して、医師に連絡しましょう。
当院では、漢方薬を内服して2-3か月後には必ず採血を実施して肝機能や血清カリウム値のチェックを行っております。開院して2年になりますが、現時点でこのタイミングの採血で異常のあった方はおられません。もしも異常を認めたとしても、このタイミングで服用を中止すれば、ほとんどの方は正常に戻ると考えます。
先月から小林製薬の紅麹を含有するサプリメントを内服して腎障害があったというニュースが報道されております。紅麹そのものではなく、なんらかの有害物質の混入が疑われておりますが、食品やサプリメントであっても100%安全なものはなく、「何かおかしい」と思ったら医師の診察を受ける、という姿勢が大切だと思います。