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糖尿病のスティグマをなくす活動

[2024.08.16]

糖尿病患者さんは食べ過ぎ、飲みすぎで不摂生を繰り返す、自己管理ができないだらしがない人がなる病気という画一化されたイメージを持たれることが多いといわれています。糖尿病患者さんは失明や透析が必要になったり、心筋梗塞や脳梗塞になると決めつけられることがあります。しかし、それは糖尿病患者の一部、ごく一面を描いているにすぎず、糖尿病患者が日本で1000万人いるといわれる現状では、糖尿病患者の大部分は普通の人たちです。近年では“負の烙印”という意味を持つ“スティグマ”という言葉を用いて、糖尿病における悪いイメージで患者が不利益を被ることがないように擁護する運動が海外で興り、本邦でも糖尿病におけるスティグマをなくす運動が始まっています。糖尿病のスティグマとは、糖尿病に対する誤った認識や偏見のことを表しており、スティグマをなくす運動をアドボカシー活動と呼んでいます。

糖尿病患者は太っていて、お酒ばかり飲んで節制が出来ない、心の弱いひとだという偏見も世間にはあるようですが、私はまったくそう思いません。日本人の2型糖尿病の平均のBMIは24前後です。つまり、BMI>25を肥満と定義するなら、日本人の2型糖尿病患者の半分は肥満ではありません。アルコールの飲みすぎも糖尿病の原因になることがありますが、アルコールそのものは血糖値を上げる作用はありません。

糖尿病を発症するかは、主としてインスリン分泌能力で決まり、遺伝的な影響も強く受けています。糖尿病の原因をその人の生活態度だけに求めることは間違っています。

糖尿病患者は命が縮むという偏見もいまだにあります。現在でも、残念ながら住宅ローン・生命保険などで不利益を受けることがあります。しかし、最近の統計では、40歳時点での平均余命は糖尿病患者さんも一般的な日本人も変わらないというデータが出てきております。糖尿病患者だからといって個々の健康状態を見ずに、住宅ローン・生命保険に入れないという制度や仕組みが問題であり、スティグマによって糖尿病患者さんの心を不当に傷つけてしまいます。客観的なデータを積み重ねて改善すべきことです。

スティグマは糖尿病の治療にも影響することがあります。治療にインスリンが必要な方の場合、インスリンを使うとすごく重い糖尿病という印象を持たれると考え、社会からの差別や偏見が気になり、単に注射が嫌なだけではなく世間体から注射をしないという方もおられます。しかし注射をしないことでますます糖尿病は重症化し合併症が進むとなると、それは非常に残念なことです。糖尿病であること自体を隠して治療を受けない、あるいは中断される方もおられます。こうしたことが起こらないように糖尿病のスティグマを軽減し、糖尿病であることを隠さずにいられる社会を作っていくことが大切だと考えています。

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