防風通聖散ってやせ薬、もらえませんか?
当院は肥満外来も行っておりますが、多くの患者さんが、ツムラの62番を希望して来院されます。62番:防風通聖散の作用を生薬から説明します。
防風通聖散に含まれている生薬は
当帰(トウキ)、芍薬(シャクヤク)、川芎(センキュウ)、山梔子(サンシシ)、連翹(レンギョウ)、薄荷(ハッカ)、生姜(ショウキョウ)、荊芥(ケイガイ)、防風(ボウフウ)、麻黄(マオウ)、大黄(ダイオウ)、芒硝(ボウショウ)、白朮(ビャクジュツ)、桔梗(キキョウ)、黄芩(オウゴン)、甘草(カンゾウ)、石膏(セッコウ)、滑石(カッセキ)
と18の生薬が配合されており、保険で使えるエキス剤の中では最多です。(漢方薬1剤に含まれる生薬は、平均すると7つから8つくらいです。)
肥満のない方には使いません
まず、大黄と芒硝が含まれていることに注目しましょう。大黄は、センノシドやプルゼニドに含まれるセンノシドを含んでおり、古来から下剤として使用されております。また芒硝は硫酸マグネシウムであり、便を柔らかくする緩下薬としての作用があります。ということで、実はこのお薬は下剤の仲間であり、保険病名も「腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなもの。」となっています。あまりにも痩せて虚弱な人が飲むと、下剤に伴う腹痛が起きることがあります。このことからもBMI<22なんだけど、もっと痩せたいので防風通聖散が飲みたい。という方にはあまり適していない可能性が高いです。(BMI:体格指数とも呼ばれる。体重kg ÷身長m÷身長mで計算される)
適応は、BMI>25で、実証といって、比較的体力があり、筋肉質でがっちりタイプ、声が大きく、暑がりで胃腸が強くて、便秘がちな人に適した漢方薬と言えると思います。
防風通聖散は生薬が18剤も入っています
麻黄はエフェドリンを含有しており、代謝を高めて汗を出す薬効があります。当帰、芍薬、川芎は、補血(血を補う)に関係する生薬です。また当帰があって地黄を含まない漢方は、駆お血(くおけつ)作用といって、血液の循環を改善する作用があるといわれております。石膏があるので、冷やして炎症をとる漢方薬であるといえます。山梔子や黄芩(おうごん)は炎症を取って気を静めます。防風も抗炎症作用・鎮痛作用、桔梗は排膿作用です。滑石や白朮には利尿効果があります。全体として、便通を促し、発汗・排尿を促進して、熱を取りながら循環を良くして、皮膚も整えるイメージです。芒硝・滑石・石膏と鉱物が3つも入っているのはこの防風通聖散だけだと思います。生薬が18剤も入っているお薬ですから、速効性というよりは、ゆっくりとじわじわ体質改善をするというイメージの漢方薬ですね。
便秘がちな人に使うと、気持ちの良い排便が得られ、スッキリとします、という声もよく聞かれます。
荊芥、連翹、桔梗、石膏を含んでおり、肥満の方の皮膚疾患にも有効なお薬です。皮膚疾患に用いられる58清上防風湯や50荊芥連翹湯も構成生薬が似ています。肥満があると皮膚に炎症が生じ、吹き出物のような状態になることがあり、このような状態に有効だと思います。
漢方を飲むだけで瘦せられる?
防風通聖散だけで劇的に体重が減るという期待を抱く方もいますが、実際のところ「飲むだけで痩せる魔法の薬」ではありません。防風通聖散は代謝を促進し、便秘やむくみを改善するなど、減量をサポートする効果はありますが、過剰なカロリー摂取や運動不足をカバーするものではありません。しかし、適切な食事療法や運動を取り入れつつ服用することで、その効果を最大限発揮することが可能です。外来では「防風通聖散は補助的な存在であり、生活習慣を整えることで本来の力が発揮される」という点を丁寧に説明し、納得いただいた上で処方しています。

大黄。ツムラ株式会社より提供
