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風邪をひいてしまった時

[2023.12.12]

表と裏

かぜは体が冷えて免疫機能が低下した際に、ウイルス外から侵入することから始まります。漢方では上気道粘膜や皮膚から入ってくると考え、これを表(おもて)といいます。ここで、悪寒がしたら、大人なら葛根湯、子供なら麻黄湯を内服します。この時期にはなるべく体を温め、汗をかくことが大切です。葛根湯や麻黄湯などの麻黄剤は、発汗を促す作用があり、ウイルスが表にある時期に効果を発揮します。
表(おもて)で風邪を食い止めることができれば、会心の勝利、最高の経過です。しかし、しばしばここではウイルスを食い止められず、第2ステージに入ります。このとき、ウイルスは表と裏の間、半表半裏(はんぴょうはんり)にあるとされており、ここで免疫との戦いが繰り広げられます。この段階では、柴胡桂枝湯などの柴胡剤を選択します。柴胡剤は、炎症を抑え、免疫を上げる作用があります。この時期は、同じく体を冷やさず、よく睡眠をとることが必要です。
表から裏(肺などの内臓)に回ってしまうと、激しい咳が数週間長引く、最悪のコースになってしまいます。こうなってしまったらじっくりと回復を待つしかありません。咳に対しては、麦門冬湯や柴朴湯などを、痰がからんだ咳に対しては清肺湯を用います。気を補う補中益気湯などの補剤も併用します。
 
風邪にはこのように漢方を使いながら戦うのがベストですが、漢方が苦手な方には、上記の漢方を除いた部分だけをお伝えします。悪寒がしたら半身浴で汗をかくこと、体を冷やさないこと、その後はよく睡眠をとって休むようにお伝えしています。体を温めることで、免疫力が数倍に上がりますし、逆に体を冷やしてしまうと免疫力が低下し、かぜがぶり返してしまいます。睡眠中はもっとも体が休まっている状態であり、この間にウイルスによって傷ついた粘膜が修復され、風邪が治ってゆきます。

柴胡桂枝湯

風邪に一番処方される1番葛根湯ですが、風邪のひき始めに有効な薬です。葛根湯が有効なのは風邪をひいて、まだ熱が出る前に悪寒がする時期から内服するのがベストです。それ以後、高熱は出なくなったものの微熱が続く場合、咳や痰などの呼吸器症状、倦怠感が続いているとき、10番柴胡桂枝湯の出番になります。
柴胡桂枝湯は、柴胡、黄芩、半夏、人参、桂枝、芍薬、甘草、大棗、生姜からなります。柴胡桂枝湯には、桂枝湯という漢方の基本骨格を含んでおり、柴胡+桂枝湯という名前になっております。柴胡+黄芩の組み合わせは、風邪による炎症を抑える働きがあります。半夏は吐き気や咳を抑えます。人参は野菜のニンジンではなくて、ウコギ科の薬用のチョウセンニンジンで、体力を回復します。甘草、大棗、生姜は、それぞれ、甘みを与える生薬、なつめ、生のショウガです。この3つの組み合わせはいろんな漢方に含まれていますが、昔のブレンドの胃薬とお考え下さい。
桂枝湯は名前の通り桂皮(シナモン)を含む漢方薬です。シナモンはマイルドな発汗作用があります。芍薬は気持ちを鎮める鎮静作用や、筋肉を緩める薬能があります。患者さんが病院にいらっしゃる段階では、第2ステージになり葛根湯の時期を過ぎており、柴胡桂枝湯が選択される場合が結構多いです。

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