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学会発表のこと

[2022.09.29]

私は、このクリニックを開院するまえは関東中央病院に7年おりましたが、数多くの学会発表を行ってきました。その多くは症例報告といって、教訓的な症例を学会に報告するというものでした。

医者というのは、次から次へと患者さんを診てゆくのですが、人間ですから記憶は日々薄れていきます。重症で治療が大変だった患者さんや、治療がうまくいった患者さんを何週間も皆で議論しているとあっという間に時間が経つのですが、その患者さんが決着がついて退院となり、また次の患者さんが入ってきますと、だんだんと古い記憶が薄れてしまうのは非常にもったいないと思われ、せめて自分のノートに書き残すということをしていました。

自分のノートだけではやはり物足りなく、それを報告する場として学会というものがあります。そこで、自分で発表することも良くありましたし、また、若手の先生方に発表してもらい、わたしは2番目の演者に入れてもらうということもありました。はっきりと数字は覚えておりませんが、筆頭演者は15ぐらい、セカンドは20-30ぐらいでしょうか。

若い先生とそこで交流も多くありました。若い先生に言っていたのは、抄録だけはこの世に残るものであるから、きちんとした文章を書くようにしよう、この症例が教訓として引用される場合に備えて、とくに検査データなどの客観的な数字は可能な限り入れることと、一行考察は知恵を絞って書こう、ということを言っていました。

私が学会発表を始めたころは、壇上にあがると緊張で頭が真っ白になってしまい、何をしゃべったのかわからないまま終わったことだけほっとしているという状態で柔道の試合よりも緊張しましたが、場数をこなすことで、だんだん異常な状態に慣れてゆきました。最近の若い先生の中には、発表経験がすくなくても、物おじせず質疑応答もしっかり受け答えする先生が増えてきており、指導医として感心することが多かったです。

今思えば、日々の臨床経験をファーストでもセカンドでも発表して形にしていたのが自分の満足になっていると思いますし、同じような患者さんに遭遇した時に、昔であった患者さんのことを思い出す手掛かりになります。想定質問を考えに考えて臨んだ学会発表はたいていうまくいきますし、準備をしていればある程度のアクシデントには対応でき、自分の自信になってきたと思います。

私の医者人生も後半戦に入り、今のところクリニックの運営に追われておりますが、落ち着いたらまた学会発表をしてみたいと思っています。

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