インスリンの追加分泌を評価する方法
インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、血糖値を下げる働きがありますが、もっと詳しく言えば、ブドウ糖を細胞で利用するために、血液中から細胞内に送るためのホルモンです。結果的に血糖値が下がります。インスリンの分泌は、大きく分けて基礎分泌と追加分泌に分けられます。
インスリンの基礎分泌と追加分泌とは
基礎分泌とは、空腹状態でも、比較的低い濃度でインスリンが分泌されていることを指しております。追加分泌とは、食事の刺激によって、血糖値が上昇するのに合わせて、その上昇を打ち消すようにインスリンが追加で分泌されることを指しております。
基礎分泌を測定する簡単な方法は、空腹状態で朝来院してもらい、採血で血糖値とインスリン値を同時に測定することです。
追加分泌の測定
追加分泌を測定する方法はいくつかありますが、クリニックでも行っている方法は、ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行うことです。ブドウ糖負荷試験は、空腹状態で来院してもらい、75gのブドウ糖が入った炭酸水を一気に飲んでいただきます。濃いめのサイダーのようなもので、私は好きです。300kcalのエネルギー量がありますので、大盛ごはんどんぶり1膳分に相当します。これを飲む前のインスリン値と血糖値、および飲んだ後30分後のインスリン値と血糖値を測定し、その傾きから、インスリンインデックスを計算します。
つまり、インスリンインデックスは、インスリン値の上昇分/血糖値の上昇分であり、この値が0.4を下回っていれば、追加分泌が低下していると判断されます。
糖尿病なのか、そうでないのか判断する方法
OGTTは主に、境界型糖尿病(正常と、糖尿病状態の間の状態)と真の糖尿病を見分けるために行います。糖尿病と診断されて初めて糖尿病の治療薬が使えることになりますので、この見極めにOGTTはもっともよい方法です。HbA1c 6.1%から6.5%程度で糖尿病が疑われる方に実施しております。HbA1c 7%以上で、血糖値も明らかに糖尿病型を示す例では行いません。判断がつかない微妙な場合にOGTTを行っております。
正常型から境界型に移行しますと、インスリンの追加分泌が低下し、食後の高血糖を示すようになります。しかし、空腹時血糖値は上がりません。さらに追加分泌が低下して、食後の高血糖がなかなか下がらず、空腹時の血糖値が126mg/dLを超えるようになりますと、糖尿病型と判断します。追加分泌を評価するのにインスリンインデックスを計算しております。これが0.4以上に保たれていると、1時間値が200mg/dLを超えていたとしても、2時間値は200mg/dLを下回り、糖尿病の診断に至らないことが多いのです。追加分泌を評価することは、糖尿病に進展する可能性を評価することにつながるのです。