コレステロール高値と久山町スコア
女性は50歳を過ぎたあたりから閉経を迎え、卵巣からの女性ホルモンが急激に低下します。そのため、太っていない標準体重ぐらいの女性でも、コレステロールが高くなり、健診でひっかかるかたが増えています。
LDL-C(LDLコレステロール)を下げるお薬の王様が、スタチンというお薬です。アトルバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチンなどがあり、LDL-Cを平均40%程度低下させるお薬です。効果や安全性の高いお薬ですが、そのほかのリスクが小さい、つまり糖尿病のない、高血圧のない、喫煙もない場合、スタチンを飲んだほうがよいのか、悩んでいるかたも多いのではないでしょうか。
このような場合に、動脈硬化性疾患発症予測ツールが有効です。
動脈硬化性のイベントを起こす可能性を、クラウド上で計算できる
これは一般に公開されているアプリで、ボックスに年齢、性別、LDL-C, HDL-C, 血圧の上の値や喫煙の有無などを入力しますと、10年間の動脈硬化性疾患の発症確率を計算してくれます。動脈硬化性疾患とは、冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症)と脳梗塞のことです。コレステロールが高いというだけでは無症状で、実際にイベントを起こす確率を知ることの方が大事です。久山町の長年のデータベース研究で、同じような数値を持っている方は、10年間にイベントをどれぐらい起こしたのかがわかっており、多変量解析の手法を用いてリスクを計算できるのです。
リスクの評価方法
このリスクの数字が
1-2%の場合、 低リスク
2-10%の場合、中リスク
10%以上の場合、高リスク
と評価します。低リスクの患者さんは、スタチンを飲まなくてもよいと説明しています。高リスクの患者さんは、スタチンを飲んだほうがよい、と強く勧めます。中リスクの患者さんには、患者さんごとに相談の上、方針を決定します。大事なことは、患者さんに久山町スコアの結果を説明し、イベントを起こす可能性を説明したうえで、患者さんが納得して意思決定をしてもらうことです。
このスコアでは、LDL-C 180mg/dLを超えていても、血圧やHDL-Cなどが大丈夫で、喫煙がない女性では、50歳を超えていても多くの方は低リスクに分類されています。10年間でイベントを起こす可能性が2%以下なら、スタチンを飲まずとも食事療法だけで十分でしょう。当院では、スタチンの開始時にイベントリスクを必ず計算して、患者さんごとに最適と考える治療のアドバイスを行っております。