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ゴミ出しと認知機能

[2022.07.02]

ごみ屋敷という言葉があります。もともとちゃんとした人が住んでいて、立派なおうちだったのに、いつの間にか敷地のなかがゴミだらけになってゆく。多くの方は、ご高齢になって、これまでできていたことができなくなり、ゴミを出せなくなると考えられています。

ADLという言葉を聞いたことがありますか。スペルはActivity of Daily Livingで、日常生活動作と和訳されています。高齢者がフレイルを経て、要介護になる過程で、最初に低下するのが手段的ADLと言われています。

手段的ADLは、買い物であったり、食事の準備であったり、脳機能を使うADLとも言えますが、ゴミを捨てるという作業も手段的ADLです。

私は、家の中でゴミ捨てを担当することが多いのですが、まだ40代の私にとってもゴミ捨ては結構大変な作業です。まず、朝8時までに出さなくてはなりません。ごみも可燃ごみや不燃ごみ、資源ごみと分別しなくてはなりません。曜日も決まっています。

私にとってはごみでも、家族にとっては宝物だったりします。子供の大事な宝物を捨てたらあとが大変です。

クリニックのゴミ出しも結構大変です。採血で使った針はプラスチックのボックスに入れて、医療廃棄物として処理しています。感染性のない一般ごみについては、事業系の廃棄物に該当しますので、一般の家庭ごみとは区別されます。それぞれ専門の業者と契約し、処理してもらっています。

私たちの年齢ですら、ゴミ処理はこんなに大変なのです。ご高齢になりますと、認知機能の低下が認められやすくなり、ゴミ出しが難しくなることが容易に推察されます。

日付や曜日の感覚がなくなり、ゴミを捨てる収集日にゴミを出せなくなるのです。捨てられないゴミが徐々にたまり、部屋の中を埋め尽くすことでゴミ屋敷と化してしまうのです。

また、認知機能が低下すると、物を集める「収集癖」の症状が起こるケースがあります。認知症による収集癖の特徴は、ゴミでしかない物を「まだ使える」と判断し、捨てずに集めることです。自宅にあるゴミだけでなく、ゴミ収集場所でまだ使えそうな物を拾ってきてしまうこともありえます。

そのような状態になったら、要介護認定をうけて、ヘルパーさんにおうちの中の片づけを手伝ってもらう必要があります。

頭を使って日々生活する、このトレーニングは高齢になってからこそ大事になってきます。診察室の中ではこういった相談も行うことがあります。

 

 

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