橋本病
橋本病は1911年頃、九州大学の橋本策教授が報告した疾患です。橋本先生は、甲状腺摘出標本のうち、「リンパ球がたくさん入り込んで破壊されて腫れている甲状腺」について報告し、橋本病と呼ばれるようになりました。実は、成人女性の20%は、橋本病にり患していると考えられております。その証拠として、抗甲状腺抗体が血液中に見つかります。抗体を持っている人は、橋本教授の報告した甲状腺濾胞へのリンパ球浸潤を病理で認めておりますので、実際にも甲状腺に病変はあるのですが、その中でさらに10%程度が、10年単位の年月を経て、チラーヂンS内服が必要なレベルにまで、甲状腺ホルモンの分泌が起こるといわれています。つまり、女性人口の1-2%は、治療が必要となる橋本病に進展するわけです。
成人女性の数をおおよそ5000万人としますと、50-100万人がチラーヂンSを内服しております。男性は女性の10分の1程度と考えられます。当院でも多くの橋本病の患者様を診察しておりますが、甲状腺ホルモンの半減期は1週間程度と長く、甲状腺機能を定期的に測定すれば、おおよそ必要な量を補ってゆくのは難しくはありません。わかりやすく考えると、甲状腺を全摘した患者様で、おおよそ1日100μgのチラーヂンS内服が必要と考えられております。甲状腺ホルモンは人体では代謝の維持に必要なホルモンであり、かならず必要量を補充する必要があります。