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QOLを改善する薬

[2023.11.27]
当院は漢方内科を標榜しておりますが、漢方薬よりも西洋薬のほうが良い場合も多くあると考えております。当院で使う西洋薬で、QOLを改善する薬についてご紹介します。
漢方内科を行っていることで、病気だけではなく患者さんそのものを診る視点というものが養われるという気がしております。と言いますのは、漢方薬は1剤で、いろいろな症状を改善することがよくあり、また、患者さん一人に対して、基本的には1剤を処方して対応するべきであるとされています。患者さんの体質と症状を見極めて、まず一つの薬を選択し、効果を試します。そして、必ず再診時に、この薬はどうだったかを尋ねます。少しでも効果が出ていれば継続し、効果がないと判断したら他の薬に変更を考えます。
西洋薬の良い点は、まず飲みやすいという点があります。それ以外にも、漢方薬とは成分が異なるため併用することに問題がなく、追加で使いやすいことが多いのです。したがって、QOLを改善する西洋薬は漢方薬とも相性がよいと考えます。
以下、診察室でのよくある訴えに使うお薬について、具体的に説明してゆきます。
めまいに対しては漢方もつかいますが、西洋薬で効果が高いとされているメリスロンも処方しております。メリスロンについては、以前コラムでも紹介しました。メリスロンについて
また、お尻から太ももの後ろ側にかけての痛みやしびれのことを坐骨神経痛と呼び、中高年にふえてくる症状です。坐骨神経痛については、メチコバールを試します。このお薬はビタミンB12で、神経を修復する作用があり、痛みが改善することを経験しております。
メリスロンもメチコバールも漫然と使わないことが大切で、効果がないと考えたら一度中止することにしております。
胃の痛みにたいして、PPIという胃酸を強力に抑制する薬が効果があります。しかし、 胃酸を抑えてしまうというのは、胃の殺菌作用を落としますので、本当に必要なケース以外は使わないようにしております。本当に必要なケースは内視鏡で胃潰瘍・十二指腸潰瘍(粘膜の欠損)を認める場合、抗血小板薬を継続しなくてはならない状態があり、胃潰瘍のリスクが高い場合、難治性の逆流性食道炎がある場合です。
足のむくみについては、ダイアートとか、ラシックスを使っていたことがありますが、これらの薬は強力に血管内脱水を起こす薬ですので、ときに血圧低下を起こすことがあり、漢方内科を開始した現在は圧倒的に五苓散がファーストチョイスです。五苓散は利尿効果はそれほど強くありませんが、体内の水分の偏在を改善するとされており、血管内脱水を起こすことはまずないので、安心して使えます。
それでは、どのようなケースにラシックスを使うかと言いますと、心不全やネフローゼ症候群で胸水が溜まってきたようなケースでは、ラシックスを使っています。最近は、細胞内の水を主として引いてくれるサムスカという製剤もありますが、高ナトリウムをきたすことがあり、原則入院で導入する薬とされております。
頭痛にロキソニンはやむをえない場合には使います。ロキソニンは立ち上がりが早く、患者さんにも人気があり、効果が高い鎮痛薬ですが、同時にロキソニンは中毒性が高い薬であり、月に10日以上連用するようになると、薬物誘発性の頭痛を起こすリスクが高いとされています。そして、長期連用すれば、消化性潰瘍や腎機能障害のリスクがありますので、痛みがあるときの頓用で使うべきと指導しております。ただし、シップについては、局所に対する鎮痛薬ということで、こういった全身への作用は少なく、希望がある方には保険の範囲内で処方をしております。西洋薬と漢方薬を使い分け、ときに併用して患者さんに薬を使っています。

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