糖尿病があると癌になりやすい?
日本人の死亡原因の1位は癌であり、全体の死因の1/4に及んでいます。生涯で癌にかかる割合は50%を超えております。当院に通院されている患者さんでも、複数の癌を経験したという患者さんも珍しくありません。癌は高齢化社会の現代にとても身近な病気になっております。さて、糖尿病をもつひとは癌にかかりやすいのか、これはかなり難しい問題です。糖尿病患者さんは定期的な通院で採血をしますので、採血の異常値から癌が見つかりやすいという発見バイアスが指摘されております。
この問題は、癌の発見バイアスと呼ばれております。バイアスとは、がんと糖尿病との関連を見る際に、その両者に関係のある、年齢、性別(高齢かつ、男性の方がより糖尿病にかかりやすく、がんにもなりやすい)、飲酒、喫煙、そして、病院の受診頻度などの要素が影響し、糖尿病があると癌になりやすいという直接の因果関係を示すことが難しくなるのです。
日本人で、交絡因子の影響を補正して統計をきちんととったところ、糖尿病があると、がん全体で1.2倍がんにかかりやすいという結論になりました。
簡単にいえば、癌が発生するまでの過程は、患者本人の遺伝的な要素に加え、食事や喫煙をはじめとする生活習慣と加齢による変化などが相まって癌を発生することになりますが、糖尿病をもつと「少しだけ癌になるリスクを上げる」ということになります。糖尿病がないひとの癌になる確率を10とすると、糖尿病があれば12に上がるということになります。高血糖ががんの発生に関与していることが推定されますので、治療がよくなった現在では、もうすこしこのリスクが下がっていることが期待できます。
私は当院に通院している糖尿病患者さんの癌をなるべく防ぎたい、そして、癌をなるべく早期に発見したいと考えております。
予防としましては、禁煙・過度な飲酒の是正を呼び掛けています。禁煙ひとつとっても簡単ではありませんが、患者さんとの話し合いで最終的には患者さんが納得して禁煙していただいた方もいらっしゃいます。
また、癌の早期発見のために、外部委託によりCTスキャンを実施しています。必要な患者さんにはCTを撮影していただき、診察室で画像を見ながら患者さんにご説明しております。消化器系の癌が疑われた場合は、近くの内視鏡が必要な施設も紹介しております。そして、癌が見つかれば最も適切な施設を紹介しています。