漢方薬の作り方
当院で処方している漢方薬のほとんどは、ツムラのエキス剤です。昔の漢方薬は生薬を煎じて処方しておりましたが、最近はアルミ包装されたエキス剤がほとんどになりました。どのようにして生薬からエキス剤を製造しているのでしょうか。
漢方薬の製造過程についてですが、まずファーストステップとして、生薬から有効成分を抽出します。われわれが紅茶をtea packから飲むとき、お湯に溶かしてビヨンビヨンとやってお茶を作りますが、あれは熱湯抽出といわれているものです。漢方だと、エタノール抽出など、いろんな抽出方法がありますが、有効成分を抽出するという点で、紅茶をお湯だしするのと本質的には同じです。
その抽出された物質を、漢方薬の工場でフリーズドライで乾燥させ、エキス粉末とします。粉末を乳糖などで固め、コイン状にして、それを破砕して細粒にしています。乳糖は粉末を飲みやすい形を与えるということで、賦形剤と呼ばれており、エキス剤を作るうえで欠かせないものですが、乳糖不耐症の患者様は注意する必要があります。細粒となった薬がアルミ包装されて患者さんに届けられますが、患者さんは熱湯やぬるま湯などでさらに溶かして飲むわけです。とかしてもまた湯呑の底に固形物が沈殿してきます。この沈殿物に薬効のあるものがあるので、この沈殿物までさらにお湯に溶かして最後まで大事にいただきます。生薬を煎じて飲むという工程を、このような形で保存性を高め、1年以上の有効期限で保管できるようにした、現代の医療用漢方の技術は驚くべきことだと思います。さらに、医療用漢方は健康保険が使えるのです。漢方薬局で購入する煎じ薬は、月に平均1-2万円の薬剤負担となりますが、医療用漢方のエキス剤の負担はその1/10程度ですみます。漢方薬のほとんどは、このエキス剤の形で処方し、患者様に内服していただいております。
最近、コロナ禍の影響で、エキス剤の需要が伸びたため、出荷制限がかかっている形になっております。入手が難しいお薬については事前に門前薬局さんに在庫を確認をとる時間をいただいております。ご理解のほどお願いいたします。