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アルコールと中性脂肪

[2023.08.13]

50代の男性Aさん、糖尿病で通院しており、インスリン注射を行っておられます。お仕事はご多忙で、家に帰ってからのビールロング缶2本がなによりの楽しみだということです。食事は外食で、最近はかつやができたので、そこに一人でよく行っています。妻子はおられますが生活時間が合わず、外食が多くなるのだそうです。

BMI 28.5と肥満があります。HbA1c 7.5%で、中性脂肪が、毎回の採血で500から800mg/dLと非常に高い値です。中性脂肪は血糖値と、肥満、アルコールの量が原因と考え、まずは禁酒日を作ることに一緒に取り組みました。これまで365日、風邪をひいたときも飲酒を欠かさなかったAさんは、「飲まない日を作るなんて、無理」と最初は拒否反応を示しておられました。しかし、禁酒日を作るとお酒の量が減りますと説得され、週2回の禁酒日を作ることに成功したAさん。3か月ほどたってから、「実は先生の言う通りで、禁酒日を作ってからアルコールに少し弱くなった気がする。ビールロング缶1本で満足するようになり、最近はショート缶の日もある」とのこと。中性脂肪の値も280mg/dLと以前よりだいぶ低い値でした。これで改善しなかったら、フィブラートという薬を飲みましょうとお話ししていましたが、とりあえず薬開始は延期として、経過を見ていくことになりました。

飲酒すると中性脂肪が上昇する理由

アルコールを過度に飲酒すると、肝臓はアルコールの分解にエネルギーを使い、脂肪などの栄養素の代謝が落ちます。そのため、肝臓に中性脂肪の原料が多く蓄えられ、血中の中性脂肪が上がりやすい状態になります。また、Aさんのようにインスリンが必要な糖尿病の方は、組織でのLPL活性が低下しています。LPL活性とは、中性脂肪を分解してエネルギーを取り出す酵素で、血管の壁に存在しております。そのため、中性脂肪が上がりやすい体質になっているところ、アルコールがそれを助長したと考えられます。

アルコールは量を減らしましょうということはなかなか難しく、Aさんのように、禁酒日を作ることで、結果的に量が減り、体質が改善されるということはしばしば経験しております。患者さんごとの問題点を管理栄養士と相談し、最適な食事指導を心掛けております。

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