SGLT2阻害薬とケトン体
SGLT2阻害薬という糖尿病のお薬が2014年に発売され、糖尿病の方に広く使われるようになりました。このお薬はきちんとした臨床試験を経て発売されており、安全性の高い薬ではありますが、発売されてから、内服後のケトアシドーシスの症例報告がいたるところでなされるようになりました。
ケトアシドーシスとは、ケトン体が過剰に産生され、血液が酸性に傾いた状態です。
ケトン体とは
ケトン体とは、脂肪酸が代謝されず、エネルギーとして利用できない時に、アセチルCoAを経由してケトン体に変化するものです。
ケトン体の分画には3つありますが、この中で、3ヒドロキシ酪酸とアセト酢酸は酸性ですので、過剰になりますと血液のpHが酸性に傾いてきます。
ケトン体は、体内で、0.3mmol/L程度に保たれていますが、これが何らかの原因で上昇しますと、ケトアシドーシスになり、嘔気・嘔吐が誘発され、食事がとれず入院になる場合があります。
血中ケトンが増加する原因
血液中のケトン体濃度が上昇する原因はいくつかありますが、主な原因は以下の3つになります。
一つは、インスリンが絶対的に足りない場合です。
一つは、飢餓状態です。糖質制限ダイエットなどで糖質の摂取量が極端に少ない場合も含みます。
一つは、SGLT2阻害薬の内服による体内のエネルギー代謝の変化です。
SGLT2阻害薬と食事
SGLT2阻害薬の内服だけで、ケトアシドーシスになることは少なく、糖尿病と診断されていて、過度な糖質制限を実行したため、糖をエネルギー源として利用できず、脂肪分解が過剰に起こったため、代謝が追い付かず、脂肪酸がケトン体に変化し、SGLT2阻害薬の作用と合わせ技で、ケトアシドーシスを生じるとされています。
ですので、とくにSGLT2阻害薬を内服するときは、糖質制限はしないように、ごはんは1食当たり100gは食べましょう、と診察室で指導しております。
また、1型糖尿病の患者さんでは、SGLT2阻害薬を追加しますと、インスリンの必要量が減ったように感じ、インスリンを減量することがありますが、あまりにも減らしすぎるとやはりケトアシドーシスのリスクがあります。
SGLT2阻害薬は、適応を見極め、正しく使用すれば安全な薬です。最初に処方した場合、念のため、4週間ではなく、2週間程度の受診をお願いする場合がありますが、何か副作用があったときにすぐ対応できるように配慮しています。また、当院ではケトン体を血液で定量的に測る機械を常時おいており、ケトアシドーシスが疑われる患者さんは看護師が測定するようにしております。結果は10秒で返ってくるのでその場の対応が可能です。