HbA1c (後編)
くすき内科クリニック院長の楠です。前回HbA1cについて導入のお話をいたしました。
前回のお話で、血液中に溶けているブドウ糖はわずか5gというお話をしました。これが、どれだけ少ないかというと、例えば、ごはん1膳がおおよそ150gです。この中に糖質は60g含まれています。1回の食事で、60gのブドウ糖相当量が体内に入るのに、ブドウ糖は血液に入るとあっという間に代謝されて、グリコーゲンに変わったり、脂質として体内に貯蔵されたりするということです。正直、もっともっと血液中にブドウ糖を溶かすといいのではと思ってしまいます。そうしたら、脳にたくさんのブドウ糖が行くようになるし、人体としては有利に思います。しかし、ブドウ糖は強烈な還元作用をもっており、血糖値が300-500mg/dLが続いてしまったら、そのうち血管を痛めつけてしまいます。人間は、血糖値を薄い濃度に保つことで、血管に負荷をかけず、さらに脳に栄養を供給できるぎりぎりの量ということで、正常血糖値 100mg/dLぐらいを選択したのだと思います。
血糖コントロールが悪い状態が続くと、このブドウ糖の還元作用で血管が痛めつけられ、合併症が起きます。いわゆる3大合併症というのが、網膜症、腎症、神経障害です。いずれも細かい血管が集まっているところで、高血糖に弱いところです。HbA1cは、血糖コントロールを数値で示す、もっとも歴史があって、合併症との関連のエビデンスも豊富な数値です。7%未満を目指したいところですが、患者様によっては、様々な状況で、7%を目指すことは困難な方がいらっしゃいます。そういう方は、8%をまず目標に据えることがこの数年で世の中に浸透してきました。HbA1cは成績ではなく、あくまでも個別に、その人のコントロールを示す指標であり、前後の比較もおおきな意味があります。当院では迅速検査を導入し、患者さんに当日、なるべくはやく結果をお知らせするシステムを導入いたします。ご期待ください。