インスリン製剤は人工的に合成されています。
インスリンの歴史
当院に通院されている糖尿病患者さんのうちインスリン自己注射を行っている方が多くいらっしゃいます。インスリンは約100年前に(1921年)初めて1型糖尿病の患者さんに注射され、それ以降それまで不治の病であった1型糖尿病の多くの命が救われました。当初は、大量のブタのすい臓から、わずか1本のインスリンしか取れなかったといわれており、インスリンは大変に高価なものでした。その後さまざまに改良がありましたが、40年ぐらい前までは、ウシやブタなどのすい臓からインスリンを抽出して、ヒトに打っていた時代が続いたのです。わたくしも以前担当した1型糖尿病の患者様で、30年以上インスリンを注射されている80代男性の方がおられましたが、発症当初は、ブタ由来のインスリン製剤の注射をしていたのを覚えているとおっしゃっていました。
インスリンを人工的に合成
1980年代の遺伝子工学の発達と時期を同じくして、ヒトインスリンを人工的に合成する技術が出てきました。具体的には、イーライリリー社が1983年大腸菌由来のインスリン製剤ヒューマリンを、ノボノルディスク社が酵母に作らせたインスリン製剤ノボリンを開発したというところから始まります。これらのヒトインスリンは追加インスリン(ボーラス)と呼ばれ、食後の急激な血糖上昇をコントロールするのに有用ですが、ヒトインスリンを遺伝子工学で改変し、6量体から単量体に体内で素早くばらける性質に変え、作用時間をさらに短くしたノボラピッドやヒューマログが2000年前後に開発されました。
様々な特徴があるインスリンが作成されてきました
一方で、基礎インスリンといいまして、なるべく長く、24時間持続するようなインスリンも作成されました。代表的なものがランタス(グラルギン)です。等電点沈殿を利用して生理的pHだと単量体にばらけにくく改変したのです。ランタスの登場で、それまでプロタミンと混合してその都度攪拌して打っていたNPH製剤がほぼ一掃され、インスリンを振って混ぜるという動作から解放され、ほぼ24時間安定した持効型インスリン濃度が得られました。その後、ランタスを3倍濃縮した製剤や、トレシーバというアルブミンに結合するようなスペーサーをくっつけたインスリン分子が開発されました。そして、究極の持効型製剤として、週に1回の持効型インスリンも近いうちに登場することがアナウンスされています。
当院でのインスリン治療について、下のリンクにまとめております。ご利用ください。
インスリン治療