副腎とは?
副腎は、腎臓の上にちょこんとのっかっている臓器です。X線を全方面から照射し断層面を構成するCTスキャンで副腎をみますと、筆記体で書いたアルファベットのiの下の部分のような形に見えます。大きさで言いますと、全体で1cmに満たない臓器が、左右の腎臓の上にそれぞれ一つずつあります。
副腎といいますが、腎臓の働きの補助をしているわけではありません。副腎はホルモン産生に特化した臓器で、内分泌内科の私たちが専門に扱っている臓器です。
副腎は、例えると肉まんのような構造になっていまして、肉の部分と、皮の部分に分けられます。肉の部分からはカテコラミンがでて、血圧を上げる作用があります。ここに褐色細胞腫という腫瘍ができると、とんでもなく血圧が高くなったり、頭痛、起立性低血圧、体重減少といった症状になります。
肉まんの皮の部分は三層構造になっております、それぞれの層にある酵素が違うので、違うホルモンが3種類できます。一番外側の第1層からは、アルドステロンといって、腎臓でNaを再吸収するホルモンができます。第2層からは、コルチゾールという、細胞が生きていくのに不可欠なホルモンがでます。第3層からは、アンドロゲンという男性ホルモンが出ます。
どれも人間に必要なのですが、もっとも必要なのは第2層からでるコルチゾールです。
人間がストレスを受けると、コルチゾールの分泌が上昇することがわかっており、ストレスホルモンとも呼ばれております。インスリン負荷試験といって、入院管理のうえでわざとインスリンを注射して低血糖状態を作り出すと、コルチゾールが増加します。この反応が低下していると、視床下部から下垂体、副腎の反応経路のうちどこかがおかしくなっていることを示しています。
かつて、戦前から昭和30年代ごろまでは、日本は結核が蔓延しておりました。結核は肺を冒す病気ですが、そこから血行性に副腎に転移して、副腎結核を起こすことがよくありました。視床下部や、下垂体ではなく、副腎そのものが障害されて副腎不全を起こす疾患をアジソン病と呼んでいますが、日本では圧倒的に結核性のアジソン病が多かったのです。しかし、現代でもときどき患者さんが見られます。以前経験した結核性アジソン病は、幼児期に結核に感染して、感染後50年後に結核が副腎に再燃したというものでした。
コルチゾールのことを副腎皮質ホルモンとも呼んでいますが、炎症を強力に抑える作用があることから、コルチゾール骨格を基に、多くの合成ステロイドが作られています。SLEなどの膠原病や、潰瘍性大腸炎などの自己免疫性疾患の治療にプレドニゾロンが、新型コロナウイルス感染症のサイトカインストームにデキサメサゾンが使われますが、これらは合成ステロイドで抗炎症作用を強力にしたものです。ベタメタゾンの軟膏は小児のアトピー性皮膚炎の治療によく用いられますが、コルチゾールの25倍の抗炎症作用があります。
今度は、第一層の腫瘍性病変である、原発性アルドステロン症についても紹介したいと思います。