風邪について考えること
昔から、風邪は万病のもとと言われてました。特に高齢者では、風邪→肺炎となり重篤になり命に係わる場合があり、現代もこの点は何も変わっておりません。歴史上の偉人達も、風邪をこじらせて最後はなくなっている人がきっと多いことでしょう。
医学部の講義では風邪の治療を教えてくれません。循環器なら心筋梗塞の診断と治療、消化器なら大腸がん、胃がん、すい臓がんの診断と治療は熱心に講義してくれますが、呼吸器内科で感冒の診断と治療という項目はありませんでした。今もないと思います。医者は、現場に出て初めて風邪によって受診する人がこれほど多いことを知り、現場で知識を学んでいきます。
新型コロナウイルスの変異株の中で、特に2021年12月から現在にかけて主流となっているオミクロン株は、これまでの風邪にかなり近い病状で、咽頭炎などの上気道炎が主体であり、肺炎を起こし重篤になることがあまりないです。変異を起こすことで弱毒化したともいえると思います。以下、オミクロン株も含めた一般的なかぜ症候群について、感じていることを述べます。いわゆる科学的な記述ではなく、個人の経験が多分に入っていることをご了解ください。
風邪を引いた後に咳が長引くこと、遷延性咳嗽といいますが、いわゆる3週間以上長引くことをいいます。つまり、逆にいえば、風邪をひいてせき込むことが3週間続くことは本当によくあると思ってよいです。3週間以上続くなら、咳ぜんそくやアトピー喘息、上気道咳症候群(UACS)などの疾患を考え、それぞれ吸入ステロイドやフェキソフェナジン、クラリスロマイシンなどの後鼻漏の対応など、治療が必要になりますが、多くの場合は、皆さん風邪による咳が長引いて悩んでいます。社会人は、はやく仕事に復帰しなくてはなりませんから。
ところが、咳止めやのど飴をなめても、咳は改善しません。風邪が長引いているというのは、ウイルスが何らかの形でまだ上気道に存在している可能性が高いのです。
風邪を治すには、十分な休養・栄養補給・睡眠が不可欠です。明日から会社に復帰しないといけないから、効く点滴をうってくれ、という患者様がおられますが、そんな点滴はこの世にありません。ステロイドを注射しても、一時的に症状は改善する可能性はありますが、ウイルスはまた再活性化するのです。かえって長引いてしまいます。
新型コロナウイルスは、当初感染した後の隔離解除は上咽頭PCRの2回陰性が必須条件になっていました。ところが、PCRが10日たっても、20日たっても、陽性が続き、退院できない人が続出しました。この現象をうけて、厚生労働省は、隔離解除は発症後10日間以降と定め、フォローのPCRは取らないこととしました。ウイルスの断片や死骸が咽頭に残っているから、と説明されていましたが、このRNAがウイルスの死骸である証拠はなにも出ていません。感染後、10-20日程度はしばらくはウイルスが存在している可能性が高いと思います。周囲の人への感染力は通常5日以内と考えられますが、体内には少ない量のウイルスが残っている可能性があるのです。
これまで、風邪が長引くという現象は臨床では知られていましたが、そのメカニズムも確定的なことはわかっておりません。しかし、これまで述べたようにウイルスは感染後2-3週間以内ぐらいは、まだ消えていないと考えるのが自然だと思います。オミクロン株も含めて風邪が治る過程では、決して無理をせず、体をあたためて休養し、しっかり睡眠をとり、体の免疫系統が復活してくるのを気長に待つのが、一番の近道なのでしょう。急がば回れと申します。免疫系統が復活するのには時間がかかります。
最終的には、患者様が個々に復帰時期を判断してゆくことになると思います。風邪の治療については、患者様が個々に考え、自分なりのお考えをお持ちのことがほとんどで、多くの優秀な医者は患者さんから風邪について学んでいます。
一般的な風邪薬など、症状緩和に効果があると考えられるものを書きます。
PL顆粒 1回1包 1日3回
フスコデ(頑固な咳で苦しい時に)一回2錠、1日3回
軽い場合はメジコン3T分3
咽頭痛にはトランサミン3T分3
マヌカハニーなどのはちみつも咳に有効です。紅茶、コーヒーなども体を温めます。
漢方薬はお湯に溶かして体を温めてください。
以上