下垂体とは何か
脳の下垂体は、さまざまなホルモン分泌調節の中枢を担当しています。文字通り、脳の中央に下に垂(た)れている臓器で、大きさは直径が7ミリ程度の小さな臓器です。イヤホンを左右の耳にいれると、そのイヤホンから音が出る方向が脳の中心で交わるところ、このあたりに下垂体が存在します。
下垂体が分泌するホルモンのうち、ACTH,TSH,ADHの3つのホルモンが生命維持に必須のホルモンです。ACTHはもっとも生命の維持に必須のホルモンで、これがなくなれば副腎不全となり、生きていくことが難しいです。TSHは甲状腺にはたらきかけ、甲状腺ホルモンを分泌し、甲状腺ホルモンは代謝の維持に必須です。ADHは抗利尿ホルモンと呼ばれ、腎臓での水の再吸収を行い、水分の保持に必須のホルモンです。
下垂体はさまざまな理由で障害されますが、腫瘍ができたり、下垂体に炎症性の病気がおこったり、出血や梗塞などの血流障害がおこったりする場合があります。ACTH単独欠損症といって、ACTH産生細胞のみが選択的に障害される疾患もありますが、この原因は1型糖尿病と同じように自己免疫による障害が考えられております。
ACTH分泌が低下すると、副腎不全の症状が起きます。低ナトリウム血症といって、血液の塩分濃度が低下し、吐き気や食欲低下、体重減少という症状が起きます。内分泌専門医はときどき血液中のACTH,コルチゾールを測定し、副腎不全が見つかることがあります。結果、疑わしければ、CRH負荷試験といって、ACTH産生細胞を刺激するような薬を使って、ACTHが反応するかを見ます。反応が低下していれば、下垂体性の副腎不全という診断になり、副腎皮質ホルモンの補充が必要と判断されることになります。
残念ながら下垂体のホルモンが欠乏した場合でも、副腎皮質ホルモンとしてコートリル、甲状腺ホルモンとしてはチラーヂンS、抗利尿ホルモンとしては、デスモプレシンスプレー(点鼻薬)やミニリンメルト錠などの内服薬で治療することができます。
院長は内分泌専門医の資格を持っており、当院では下垂体疾患の治療を精力的に行っております。