こんにちは。くすき内科クリニックの楠です。
バセドウ病で治療中の患者さんから、よくいただく質問のひとつが「お薬はいつまで続けるのですか？」というものです。今回は、このご質問にお答えしたいと思います。

治療の基本的な流れ

バセドウ病では、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される状態を、お薬でコントロールしていきます。多くの場合、メルカゾール（MMI）という薬を使います。

まずは、メルカゾール5mgを1日3錠からスタートして、血液検査でホルモン値が正常化してきたら、少しずつ減量していきます。
3錠 → 2錠 → 1錠と段階的に減らしていき、1錠で数か月安定していれば、次は隔日投与（奇数日または偶数日のみ服用）という形に移行することがよくあります。

どれくらいの期間、薬を飲むのか

隔日投与をどのくらい続けるかについては、以前は医師の経験則に基づいて決められていましたが、最近では「少なくとも半年以上続けた方が再発率が下がる」というデータが出てきています。

バセドウ病は、一見よくなっても再発することがある病気です。そして、再発すると再び強い症状が出て、患者さんにとって大きな負担になります。ですから、少しでも再発のリスクを下げるために、焦らず、慎重に薬を減らしていくことが大切です。

目安としては、最低でも発症から1〜2年程度は薬を続ける必要がありますが、ある程度甲状腺が大きく、初診時の症状が強かった患者さんは、それ以上の長期にわたることも珍しくありません。

それでも薬がやめられないときは？

2年ほど治療を続けても、どうしても薬が手放せない場合には、他の治療法も検討することになります。たとえば、

• 放射性ヨウ素（アイソトープ）治療

• 手術（甲状腺の一部または全部を摘出）

といった選択肢です。

ただし、どちらの方法にも注意点があります。アイソトープ治療はバセドウ眼症の悪化につながることがあり、手術では術後に声のかすれやカルシウムの異常などのリスクが出ることがあります。

そのため、メルカゾールを少量で長期にわたって使い続けるという選択肢も、慎重に検討されるべきだと考えています。患者さんの体調やライフスタイルに合わせて、治療方針を一緒に考えていきます。

メルカゾール2.5mgの登場は朗報です

2021年から、メルカゾールの2.5mg錠が登場しました。
これまでは、1日1錠（5mg）でもやや多いと感じる患者さんには、隔日投与という方法をとっていましたが、「飲み忘れが心配」「毎日同じリズムで飲みたい」という方も多くいらっしゃいました。

2.5mgが使えるようになったことで、毎日少量を飲み続けるという選択肢が増え、治療の幅が広がっています。

禁煙もとても大切です

最後にひとつ、見落とされがちですがとても大事なポイントがあります。それは禁煙です。

タバコは、バセドウ病の再発リスクを高めるだけでなく、眼症を悪化させたり、薬の効き目を下げたりすることも知られています。治療の効果をしっかり出すためにも、禁煙はとても重要です。私たちもサポートしますので、あきらめずに取り組んでいきましょう。

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最後に

バセドウ病の治療は、一朝一夕では終わらない、根気のいる治療です。けれど、正しい知識と適切な管理を続ければ、病気とうまく付き合っていくことができます。

当院では、超音波検査を活用しながら、内分泌専門医として甲状腺疾患の診療を丁寧に行っています。
治療に不安がある方、今の治療方針に悩んでいる方は、どうぞお気軽にご相談ください。

くすき内科クリニック
院長　楠 和久