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週1回で済むインスリン治療、アウィクリの登場

[2025.06.17]

2025年1月に新しく発売された「アウィクリ(インスリンイコデク)」は、週に1回の注射で済む基礎インスリン製剤として、大きな注目を集めています。

これまでの基礎インスリンは毎日注射するのが基本でしたが、アウィクリの登場により、生活スタイルに応じた新たな選択肢が生まれました。患者さんの負担軽減だけでなく、治療継続のしやすさ(アドヒアランス向上)にもつながる可能性があります。

分子構造の工夫で「1週間効く」インスリンに

アウィクリは、インスリン分子のアミノ酸を3か所改変することで、体内での分解・代謝を受けにくくした構造になっています。さらに、脂肪酸を付加することでアルブミンとの結合を強化し、血中での安定性と持続性を飛躍的に高めています。

その結果、インスリンとしての作用(半減期)が約1週間持続するようになり、週1回の皮下注射で済むという画期的な製剤が誕生しました。

単位数の考え方と初回の注意点

たとえば、これまで毎日トレシーバを8単位使っていた方であれば、アウィクリでは8×7=56単位が1週間分の投与量の目安になります。

ただし、アウィクリのペンは10単位刻みのダイヤルになっているため、実際には50単位または60単位を選択することになります。

また、初回投与時にはアウィクリの作用発現に時間がかかるため、1.5倍量での投与が推奨されています。つまり、先ほどの例でいえば、初回は70単位程度を注射し、翌週から通常量に戻す、という運用になります。

実際は、まだ30単位から50単位ぐらいの少なめの量を選択して、徐々に増量してゆくことが多いでしょう。

また、週1回のインスリンですので、毎日注射するというミスは避ける必要があります。当院で導入する際は、まずそのことを十分に説明しております。「このインスリンは毎日打つインスリンではありません。毎週●曜日ですよ。カレンダーに〇をつけてくださいね。」

まだ2週間処方の制限あり

現在(2025年6月時点)、アウィクリは「新医薬品の投与制限」により最大でも2週間分までしか処方できないため、定期通院されている方には「2週ごとの受診」が必要です。

これに対して、たとえばトレシーバは1か月処方も可能なため、「処方の自由度」という点ではやや制限を感じる方もいらっしゃるかもしれません。

それでも「注射が週1回で済む」という利点は非常に大きく、日々の生活負担は明らかに軽減されるでしょう。

在宅医療での活用

アウィクリが特に力を発揮しそうなのが、在宅医療の分野です。

たとえば、認知症のある高齢者や、手が不自由な方でインスリン自己注射が難しい場合、週1回の訪問時に医師や看護師が注射するだけで済むのは、現在の介護保険制度とも非常に相性がよく、現場でも評価が高まっています。

これまで「インスリンが必要だが毎日打てない」という理由で内服治療にとどまっていた方にも、新たな選択肢が生まれました。

当院も、訪問診療や訪問看護との連携を行っておりますので、アウィクリを使っている人が増えており、週1回でこれほど効果があるのかという声もいただいております。

今後の期待

アウィクリのような週1回の基礎インスリンは、単に「便利」なだけでなく、血糖値を安定させ、合併症のリスクを下げることも期待されています。

今後、処方制限(2週間制限)が解除されれば、さらに幅広い層への使用が進むと考えられますし、「注射=毎日」というイメージが変わることで、インスリン治療に対する心理的ハードルが下がるかもしれません。

今後の運用が注目される薬剤のひとつです。

 

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