糖尿病食事療法について
2019年に制定された食事療法ガイドラインをもとに、食事療法について説明します。
現在、エネルギー消費量をもっとも正確に測定する方法である二重標識水法を用いると、同じ年齢・性別・体格の方でも、個々のエネルギー消費量には一定の幅があることが分かっております。そのため、新しいガイドラインでは、患者さんごとの個別化をすすめること、そして、高齢者では、過度な食事制限を行わず、ある程度の許容をもって食事療法を行うことが求められております。
また、多くの就労可能な65歳以下の若い患者さんが、普通の労作にあたる場合、標準体重あたりの摂取カロリーが30-35kcalに緩められました。普通の労作とは、座位中心だが通勤・家事・軽い運動を含むと定められ、多くのサラリーマンがここに該当することになりました。例えば身長165cm 体重60kcalの65歳以下の男性なら、以前は1500-1800kcal/日の食事療法でしたが、今後は1800-2100kcalとなります。
たとえば体重75kgで肥満がある場合は、減量を目指し、ここから200-300kcalを引いた値に目標設定する場合があります。
また、炭水化物の摂取割合ですが、総エネルギー摂取の50%を目安に考えます。例えば、1800kcalを摂取している患者さんであれば、ご飯の摂取量は1食あたり180g前後ですと、総エネルギーの50%になりますので目安とします。食品交換表の考え方では、これは3単位から4単位の間ですので、食パンでは、6枚切り1.5枚から2枚程度になります。
以下、2019年に制定されたガイドラインから引用します。
近年,「個別化」と「柔軟な対応」が進む糖尿病診療であるが,本稿では,食事療法における体重コントロールと総エネルギー摂取量について取り上げる。前稿の「目標体重」の目安として,総死亡が最も低いBMIが年齢によって異なり,一定の幅もあることを考慮し,以下の式から算出する。
65歳未満:〔身長(m)〕2×22
65~74歳:〔身長(m)〕2×22~25
75歳以上:〔身長(m)〕2×22~25*
*75歳以上の後期高齢者では現体重に基づき,フレイル,(基本的)ADL低下,併発症,体組成,身長の短縮,摂食状況や代謝状態の評価をふまえ,適宜判断する。
また従来,標準体重に乗じて用いていた「身体活動量」という係数は,新ガイドラインでは,下記の「身体活動レベルと病態によるエネルギー係数」へ変更されている。
①軽い労作(大部分が坐位の静的活動):25~30
②普通の労作(坐位中心だが通勤・家事,軽い運動を含む):30~35
③重い労作(力仕事,活発な運動習慣がある):35~
そして,以下のように目標体重を用い,総エネルギー摂取量の目安を算出する。
総エネルギー摂取量(kcal/日)=目標体重(kg)×エネルギー係数(kcal/kg)
高齢者ではフレイル予防の観点から身体活動レベルよりも大きい係数を設定し,摂取エネルギー目標を上げることも可能である。また,高度な肥満例など,目標体重と現体重との間に乖離がある場合は,患者のモチベーションを維持するためにも,治療初期には実現可能な目標設定で,その後の状況をみて再設定するなどの配慮をしてよい。