バセドウ病と妊娠
● バセドウ病ってどんな病気?
バセドウ病は、甲状腺ホルモンが必要以上に作られてしまう病気です。
体が常に“アクセル全開”の状態になり、動悸がする、動くと息切れ、体重が減る、手が震える、汗が止まらないといった症状が出てきます。自己免疫という体の仕組みの不具合が原因で、特に20〜40代の女性に多く見られます。
● 薬で治療するけれど、妊娠中は注意が必要
治療は、甲状腺ホルモンの出すぎを抑えるお薬を使います。よく使われるのが、
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メルカゾール(MMI)
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プロパジール(PTU)
です。普段の治療ではメルカゾールの方が効果も強く使いやすいのですが、妊娠となると話は変わってきます。
メルカゾールは、妊娠初期に使うと赤ちゃんに奇形が起きるリスクが少し高まるとされています(約4.1%とする報告があります)。そのため、妊娠5週から9週のあいだは特に避けるべき薬とされています。
そして問題なのは、妊娠に気づいた時には、すでにこの「器官形成期」に入っていることが多いという点です。
● 妊娠を考えたら、薬の変更が必要です
だからこそ、妊娠を希望している段階で、あらかじめメルカゾールをやめてプロパジールに切り替えることがとても大切になります。
プロパジールは妊娠初期でも使いやすい薬ですが、副作用として肝臓に影響することもあるため、医師と相談しながら慎重に使用していきます。
● 授乳中の薬について
お子さんが生まれて授乳が始まると、今度は母乳への薬の影響が気になりますよね。
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プロパジールは1日6錠までなら、母乳への影響はほとんどありません。
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メルカゾールは1日2錠までなら安全とされており、それ以上飲む場合は、内服から6時間以上あけて授乳すれば問題ないとされています。
安心してお薬と授乳を両立できるように、しっかりサポートします。
● 薬が合わないときは…手術やアイソトープという選択も
薬が合わなかったり、副作用が出てしまうこともあります。そのようなときは、以下のような選択肢もあります。
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甲状腺の手術(妊娠前や、妊娠中期に限って実施)
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放射性ヨウ素(アイソトープ)治療(妊娠中は禁忌。妊娠を急がない場合のみ)
アイソトープ治療後は、少なくとも半年間は妊娠を避ける必要がありますが、治療自体のリスクは低く、その後はチラーヂンSというホルモン補充薬で安定した状態を保ちやすくなります。長い目で見ると、体の状態が整い、安全に妊娠・出産を迎えることができるようになります。
● 最後に
バセドウ病は適切な治療を受ければ、妊娠・出産も十分に可能な病気です。
でも、「いつ妊娠するか」を見越して薬を調整しておくことがとても大切です。
くすき内科クリニックは、内分泌専門医として、超音波検査を実施しつつ、妊娠を考えている方、妊娠中・授乳中の方にも安心して治療を受けていただけるよう、ひとりひとりの状況に合わせた治療方針をご提案しています。
「そろそろ子どもを…」と考えたときには、ぜひ一度ご相談くださいね。