GLP-1受容体作動薬
「GLP-1」とは?
GLP-1は、もともと私たちの身体のなかで、小腸から分泌されるホルモンです。食べ物が小腸に到達したときに分泌され、「これから糖が吸収されて、血糖値が上がるからインスリンを分泌してね」と予告する仕事を担っています。
もしこのホルモンがなかったら、血糖値が上がるまで、膵臓はインスリンを出す仕事ができないことになります。健康な人でも食後は一度血糖値が上がってしまうことでしょう。
GLP-1受容体作動薬とは
GLP-1受容体作動薬は自己注射で、GLP-1によく似ていて、膵臓のβ細胞のGLP-1受容体にくっついて作用しますが、なおかつ体内で簡単には分解されにくい細工を施したホルモン注射です。
インスリンの分泌を促し、血糖値の上昇を防ぎます。空腹時には作用しないため、単独注射では低血糖は起こりにくい薬剤になっています。
また、食欲中枢への働きかけにより、食欲の抑制、満腹感の維持といった効果も認められており、体重減少作用も認められています。
トルリシティとオゼンピック
オゼンピックのほうが、体重減少作用が強く、血糖低下作用も強くなります。しかし、体重減少の裏返しとして、胃の不快感、便秘、下痢などの消化器症状が起こることがあります。消化器症状は2回目、3回目と回数を重ねていくうちに慣れていくことがほとんどですが、その頻度はトルリシティよりも多いです。このためBMI>25で肥満が強く、食欲を抑制したい患者様にオゼンピックを選択することが多いです。逆に、トルリシティは体重を減らす作用が弱いです。それを利用して、例えばBMI22程度の正常体重の患者さんにも、血糖値が高い場合選択できる可能性があります。BMI<22になると、インスリンの方が良い場合があります。患者さんのインスリン分泌能も評価しながら、選択をしています。
患者さんには、インスリンではないけど、週1回の注射のお薬です。血糖値を大幅に改善して、食欲も抑制して体重も減らす方向に働く薬ですと説明しています。特にトルリシティやマンジャロはアテオスという打ちやすく便利なデザインですので、痛みが少なく注射はもっと痛いものだと思っていたという方が多いです。
トルリシティ、オゼンピック、マンジャロ(GIP/GLP-1受容体作動薬)の順番に食欲の抑制作用が強く、つまり体重減少効果が強い薬剤です。肥満があまりなく、体重をむしろ減らしたくない患者さんにはトルリシティを使います。肥満が最も強く、まず体重を極力減らしたい患者さんがマンジャロを使います。オゼンピックはその中間という感じで使い分けると最もうまくゆくと考えています。肥満の患者さんは内因性のインスリン分泌が残っていることが多く、GLP-1がはまると糖尿病は見事に改善します。かつて肥満合併の糖尿病治療はなかなか困難でしたが、現在はラインナップが充実しております。当院までご相談ください。
GLP-1受容体作動薬の内服薬:リベルサス
また、2021年に初の経口(内服)GLP-1製剤であるリベルサスが発売となりました。セマグルチドに吸収促進剤を加え、胃壁から直接吸収させることで、初めてGLP-1製剤の1日1回の内服治療が可能となりました。リベルサスは注射が苦手なかたで体重減少、血糖値を改善させたい方に適しておりますが、空腹時(起床時が適しています)に少量の水(120ml程度)で内服する必要があり、食後に内服してしまうと効果がなくなるため、「内服後30分は飲食しない」という服薬の条件を守っていただく必要があります。注射製剤よりも作用はややマイルドですが、比較的お若くて内服できそうな患者さんに試しています。
このように、製剤特性が違うため、GLP-1製剤の3つの薬剤を、患者様の特性によりオーダーメイドで使い分けております。
薬価
トルリシティ0.75mg 1本 2749円
オゼンピック2mgペン1本10879円