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1型糖尿病はなぜ発症するのか

[2022.06.23]

1型糖尿病はどうして発症するのでしょうか。1型糖尿病は、ときに先天性の糖尿病と誤解されている場合がありますが、1型糖尿病は先天性の疾患ではなく、生まれた後で後天性に発症するものです。発症時の年齢は中央値を取ると、10代の発症が多いですが、私は内科勤務をしていて、60代から70代、ときに80代で発症したケースも見ており、学会発表だと90代で発症したケースもあります。

では、どうして1型糖尿病が発症するのか。遺伝なのか、環境因子なのか。

1型糖尿病に関係するという遺伝子として有名なのは、免疫にかかわる部分であるHLAですが、その代表のDR4のハプロタイプは日本人の13%に見られており、ありふれたものです。しかし、1型糖尿病の発症率は年間10万人あたりわずか2人!というレベルですので、DR4を持っていても1型糖尿病を発症する人はかなり少ないということになり、遺伝子だけでは発症を説明できません。

癌のように、多因子遺伝(多くの遺伝子がわずかずつ影響し、さらに環境因子、食事、ストレス、ウイルス感染などの環境因子がかかわって発症する)の形式で発症すると考えるのが自然です。

環境因子のうち一つはウイルス感染と考えられております。コクサッキーウイルスなどのエンテロウイルスによる発症が多く知られておりますが、ほかのウイルスでも報告があります。ちなみに新型コロナウイルスによると思われる1型糖尿病も報告されており(おそらく私の知る限り1例、済生会横浜市東部病院からの報告、関東甲信越糖尿病地方会2020)、あらゆるウイルスにて起きる可能性が言われております。その機序としては、ウイルス感染により、ウイルスを排除する免疫反応が起き、間違えて膵臓のβ細胞を攻撃するリンパ球ができてしまう、という機序が想定されます。

とはいえ、HLAとウイルス感染だけで説明するには無理があり、未知の多数の遺伝子が少しずつ影響し、また、ウイルス感染以外にも多くの環境要因その他が効いてきて、発症すると考えられます。

本庶先生が開発したオブジーボという薬で癌が縮小したケースが多く報告され、注目を集めましたが、このPD-1抗体は、免疫機構のブレーキを外す役割をはたし、がん細胞に対する免疫を高めることで癌治療に効果を発揮します。しかし、この薬は、しばしば自己免疫のブレーキも外してしまい、1型糖尿病などの自己免疫疾患を引き起こすことが分かりました。わたくしも国際誌に報告をしています。(doi: 10.1530/EDM-19-0152) PD-1による発症のメカニズムが分かれば、自然に発症する1型糖尿病を発症するメカニズムに迫ることができるかもしれません。

iPS細胞で膵島を作成し根本的な治療に結び付ける試みもされておりますが、現時点ではまだまだ実用には遠い様子です。

このように、1型糖尿病の発症に、自己免疫によるβ細胞の破壊が関与していることは確実です。実際に、膵島にリンパ球が浸潤している顕微鏡画像はとらえられており、細胞性免疫による破壊だと考えられます。しかし、細胞性免疫なのに、どうしてGAD抗体をはじめとする膵β細胞に豊富に存在する物質に対する抗体が1型糖尿病を有するひとにできてくるのかはよくわかっていません。GAD抗体は、診断基準としては大事ですが、GAD抗体によって1型糖尿病が起きるというよりは、1型糖尿病が起きた結果としてGAD抗体が観察されるという理屈のほうが正しいかと思われます。

すこし難しいお話で恐縮ですが、1型糖尿病を発症する原因について、なるべくわかりやすく書いてみました。1型糖尿病は後天性に発症し、なんらかの理由で自己免疫が膵島を破壊することで発症する、そのマーカーとしてGAD抗体が重要であることを押さえていただければ良いかと思います。

1型糖尿病をもつひとの治療はインスリン療法になりますが、このことについても日をあらためて書いてみたいと思います。

 

 

 

 

 

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