ここ数年、糖質制限食がブームとなっています。糖質とは、炭水化物から野菜などに含まれる食物繊維を除いたものですが、大雑把に言えば炭水化物＝糖質と考えていいでしょう。糖質とは、具体的にはご飯、パン、麺類に主に含まれるでんぷん質とも呼びます。

当社の減量プログラムで芸能人が何キロやせて見違えるほど筋肉質な体になりましたというような某高級トレーニングジムのCMをご覧になった方も多いかと思いますが、まさにこの会社が会員に推進している食事が糖質制限食です。どのような減量プログラムを行っているかといいますと、基本的にトレーナーとマンツーマンで2か月間と期間を決めて食事指導をします。日々の食事において主食は極力取らず、高タンパクのおかずと野菜だけを食べてもらうそうです。そして、日々の食事内容を携帯電話の写真に撮ってもらい、それを専属のトレーナーにメールで送付し、その内容にたいして賞賛や励まし、修正点などのコメントが来るということです。空腹時はチーズやナッツ類などの糖質を含まないおやつを積極的にとってもらい、糖質制限を徹底しています。

特にこれまで炭水化物摂取が多かった方のなかには、短期の血糖改善効果、体重減少効果がみられるひともいるようですが、果たしてこれを長期で続けることが安全なのかというのは議論が必要です。私自身が感じている問題点としては

①そもそも継続が困難であり、リバウンドが非常に多い。　②穀類を取らずおかずだけでカロリーを取るため食費が相当かかること　③アルコールはいくら飲んでもよいという指導がなされることが多いため、かえって健康を害する可能性があること④糖質を制限すると相対的に脂質が増えるため、将来的な動脈硬化性疾患の増加が懸念されること、があります。

ある臨床試験においても肥満した非糖尿病者が低炭水化物食40g/日の厳しい低炭水化物食を指示されていましたが、実際に１年経過してみると実際の炭水化物摂取量は127gであり、低糖質食を続けることが困難であることを示していると思われます。

とはいえ、一部の患者さんには非常に有効な場合も経験します。私は、糖質制限食を完全に否定することはせず、患者さんのこれまでの食生活や、なぜ糖質制限食をやりたいかをお聞きして、もしも患者が強く希望する場合は無理のない範囲で行うことをお勧めしています。また、減量したあとの体重のリバウンドに注意を払うことにしております。

私は、米飯を適正な量摂取することは、糖尿病の食事療法に重要であると考えます。私の外来経験からは、完全に自炊ではなくても毎日ご飯を炊いている人は、食事が大幅に乱れることは少ないと思います。パンや麺類も炭水化物ではありますが、パンはパンのみで食べることは困難でバター・ジャムなどをつけなければ食べることは難しいです。コンビニでの菓子パンのカロリーや脂質の量を見てみると分かると思いますが、とても日々の食生活の主食にできるものではありません。麺類は常に食べ過ぎのリスクがあり、栄養も偏りがちです。私は糖尿病患者さんには、可能なら１食当たりのご飯の量を計量してくださいとお願いしています。適正なご飯の量は指示カロリーの数字の1/10, つまり1600kcalを指示されている方は1食あたり160g程度が適正量としてよいと考えています。

普段お仕事で忙しく、なかなか自炊が難しいという方はまずは炊飯器を買ってきて、自宅で炊飯をすることから始めてはいかがでしょうか。100gや150gのご飯をサランラップで巻いて、冷蔵または冷凍しておけば、それだけで十分な保存食です。ごはん1合＝300ｇですので、100g×３個または150×２個となります。

（2015年のみどりの広場に寄稿した原稿を加筆修正したものです）