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糖尿病のスティグマとは

[2021.10.27]

「糖尿病」という病名を負担に感じている人が多いという報告があります。予備軍を含めると2000万人、成人の4人に1人が糖尿病という時代にもかかわらず、皆様の中にも糖尿病と診断された後に家族や社会から非難、中傷を受けた経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

最近“負の烙印”という意味を持つ“スティグマ”という言葉を用いて、糖尿病における悪いイメージで患者が不利益を被ることがないように擁護する運動が海外で興り、本邦でも糖尿病におけるスティグマを減らす運動が始まっています。

それでは糖尿病におけるスティグマとは何でしょうか。それは糖尿病になると失明や透析、脳梗塞になるなどと決めつけられることであったり、不摂生、だらしない、運動嫌い、自己管理ができていないとされたりすることで社会的に様々な不利益を被ることなどがあげられます。

糖尿病患者は太っていて、節制が出来ない、心の弱いひとだという偏見も世間にはあるようですが、私はまったくそう思いません。日本人の2型糖尿病の平均のBMIは23前後です。つまり、BMI>25を肥満と定義するなら、日本人の2型糖尿病患者の半分は肥満ではありません。糖尿病を発症するかは、主としてインスリン分泌能力で決まり、遺伝的な影響も強く受けます。

糖尿病患者は命が縮むという偏見もありました。現在でも、残念ながら住宅ローンなどで不利益を受けることもあります。しかし、最近の統計では、40歳時点での平均余命は糖尿病患者さんも一般的な日本人も変わらないというデータが出てきております。糖尿病の社会的啓発、診断と治療がこれだけ進歩した今、ただ糖尿病患者だからといって不利益を被る社会のほうに、問題がある可能性があると考えます。

糖尿病患者に対する偏見が問題になるのは、治療にインスリンが必要な方の場合です。最近では治療の初期にも使うことがありますが、インスリンを使うとすごく重い糖尿病という印象を持たれると考え、社会からの差別や偏見が気になり、単に注射が嫌なだけではなく世間体から注射をしないという方もおられます。しかし注射をしないことでますます糖尿病は重症化し合併症が進むとなると、それは非常に残念なことです。糖尿病であること自体を隠して治療を受けない、あるいは中断される方もおられます。こうしたことが起こらないように、糖尿病であることを隠さずにいられる社会を作っていくことが大切だと考えます。

私は、クリニックでの活動を通じて、アドボカシー(糖尿病患者の権利擁護活動)の問題にかかわっていきたいと思います。

 

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