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謝らなくてもよいです

[2022.06.27]

私は、自分を肯定し、その中で他者も肯定できるようになるというのが人生の目標であると考えております。裏を返すと、なかなか自分を肯定するということは難しいもののようです。人間はこれまで生きてきた環境などに影響され、自己否定に向かいやすい生き物であると思います。しかし、さまざまなきっかけで、変わってゆくのもまた人間だと思います。

わたくしが以前からコラムに書いておりますように、1型糖尿病であっても2型糖尿病であっても、患者さんご本人の責任ということはなく、糖尿病はすい臓の病気、内科疾患のひとつです。以前、HbA1cが改善しないことを「すみません」とおっしゃる2型糖尿病の方にこうお話したことがあります。

「すみませんと謝る必要は全くないと思います。あなたは仕事も熱心にされている中、糖尿病の治療も指示通りに行っており、食事についても十分に気を付けていらっしゃると思います。あなたが現在患っている糖尿病はなかなかに難しい疾患で、完治するということがなかなかない疾患です。あなたが糖尿病になった背景には遺伝的な要因が強く、内因性インスリン分泌も不十分であることは検査で確認しております。一時期肥満になったことについても、あなただけの責任ではなく、あなたが肥満になりやすい体質があったと考えていますし、この時期肥満になる原因はあなた以外にも、あなたのおかれた環境にもあったと思います。コンビニエンスストアがなくては生活できない現代社会の問題もあると思います。あなたにとって大事なのは血糖コントロールよりも、あなたが心身ともに健康でいることです。今後は、どうか私に謝らないで、堂々として診察を受けていただきたいと思います。」

日本でも、アドボカシー活動がスタートし、糖尿病を持つ人も、社会で活躍できる人間であるという当たり前の啓発がなされるようになってきましたが、これは裏を返せば、糖尿病をもつひとに対してまだまだ差別的な見方があるということでもあります。正式な病名である糖尿病ではなく、糖尿という言い方に違和感を感じるのは私だけではないと思います。人間である限り、だれでも病気になりえます。このクリニックの活動を通して、糖尿病のスティグマ、肥満のスティグマ、ときに人々が直面するさまざまな病気に対するスティグマの問題に向き合ってゆきたいです。

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