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知識はゼロでなければよい

[2022.04.29]

その昔、私がまだ20代のころ、講道館図書館に村田先生という方がいらっしゃいました。この先生に柔道の歴史のことを教わったりしていたことがありました。

あるとき、何かの折に先生に「物事はゼロでなければいいからね。」と言われたのを、私はその後いろんな場面で思い起こして、前に進んできた気がします。

人間、〇〇が苦手、ということはよくあることだと思います。しかし、一回苦手と思ってしまうと、そこから逃げるようになり、ちょっとした壁で躓いて進めなくなることもあるでしょう。苦手と思っても、少しでも食いついていくことで、いつか苦手でなくなり、最後は得意種目になっていることがあると思うのです。

また、少しでも知識があれば、足りない知識を人に聞くこともできるでしょう。ゼロであれば、何を質問していいかもわからないかもしれません。

私の場合は、パソコンと英会話ですね。パソコンが苦手でしたが、このままではまずい、何とかしなくては、とずっと思っていました。何かの本で、ブラインドタッチができれば、パソコンは克服できると読んで、ブラインドタッチのゲームを買ってきて、ひたすら文字盤を見ずに打つ練習をしました。それから、だんだんブラインドタッチをマスターでき、現在ではword, excel, powerpointを、ググりながらではありますが、学会発表などでなんとか使えるレベルになりました。決して得意ではありませんが、道具は使えればよいと思っています。

私は特に留学経験などもないので、英会話についてはいまでも得意とは言えません。受験英語は一通りやりましたが、私の時代は英文和訳ができればオッケー、という時代でした(いまの子供たちはは4技能やらないといけないので大変だと思います)。関東中央病院にいたときに、一時、論文は英語で書いて英語圏に自分の仕事を発信したいと思い、英語論文を書くのに熱中したことがありました。そのときに、会話も少しだけできるようになっていました。あるとき、糖尿病学会にインスリン治療の権威がカナダから来ており、私はその講演を聞いていたのですが、講演の内容がどうにも納得できない。質問タイムになり、聴衆は300人を超えていたでしょうか、みんな黙っている。これは、私が質問しなくては!と思い、マイクの前に進み出て以下の質問をしました。

"Thank you for your wonderful presentation. This is Kusuki, from Kanto Central Hospital.

The problem is, this is an open label study. The investigators knew which patient are assigned to insulin Degludec, or glargine U300. If they have more concern about hypoglycaemia, they will increase the frequency of blood glucose measurement. What do you think about the problem? " (素晴らしいご講演をありがとう。私は関東中央病院の楠です。問題は、この試験が非盲検試験であることです。研究者は、どの患者がデグルデクかグラルギンU300のどちらかに割り付けられたかわかっているので、もしも低血糖が心配なら、血糖測定の回数を増やす、そうすると低血糖が増えるでしょう。この問題をどう考えますか?)

このとき、どうしてこんな度胸があったのか今でもわかりません。国際学会ではありませんが、その道のエキスパートに言いたいことを英語で言えたことで英語に対する自信が少し出てきました。ゼロがイチに変わった瞬間でした。

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