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インスリン治療の歴史

[2022.09.08]

当院に通院されている糖尿病患者さんのうちインスリン自己注射を行っている方が多くいらっしゃいます。1921年に初めてインスリン注射が臨床応用されてそれまで不治の病であった1型糖尿病の多くの命が救われました。しかし、ウシやブタなどのすい臓からインスリンを抽出して、ヒトに打っていた時代が随分と長かったのです。わたくしも以前担当した1型糖尿病の患者様で、30年以上インスリンを注射されている80代男性の方がおられましたが、発症当初は、ブタ由来のインスリン製剤の注射をしていたのを覚えているとおっしゃっていました。

1980年代の遺伝子工学の発達と時期を同じくして、ヒトインスリンを人工的に合成する技術が出てきました。具体的には、イーライリリー社が1983年大腸菌由来のインスリン製剤ヒューマリンを、ノボノルディスク社が酵母に作らせたインスリン製剤ノボリンを開発したというところから始まります。それから、作用時間が短く改変されたインスリンであるノボラピッドやヒューマログ、逆に、等電点沈殿を利用して生理的pHだと溶けにくく改変したランタスという製剤が出てきました。特に、2003年に発売されたランタスは一世を風靡し、それまでプロタミンと混合してその都度攪拌して打っていたNPH製剤がほぼ一掃され、インスリンを振って混ぜるという動作から解放され、ほぼ24時間安定した持効型インスリン濃度が得られました。その後、ランタスを3倍濃縮した製剤や、トレシーバというアルブミンに結合するようなスペーサーをくっつけたインスリン分子が開発されました。そして、究極の持効型製剤として、週に1回の持効型インスリンも近いうちに登場することがアナウンスされています。

単純に製剤のラインナップが増えただけでなく、CGMといって、24時間の血糖測定グラフを作成し、特に夜間血糖の推移を確認するという技術も普及してきました。この技術によって、基礎が過剰に投与されている患者さんがおもったよりも多いということが感覚としてわかるようになり、ランタス(トレシーバ)を増量してゆく投与法も適切に見直すことができるようになりました。また、私も以前学会に報告しておりますが(※)、インスリン製剤を同一部位に注射することを継続すると、インスリン皮下硬結ができてインスリンの吸収が悪化することもしばしば経験しております。患者様の腹部を一度は確認させていただいております。

インスリン治療はまだ進歩する可能性があり、私も知識のcatch upに努めてゆきたいと思います。

 

(※)参考文献

https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/58/6/58_388/_pdf/-char/ja

 

 

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