インスリン導入したら、もう一生続けないといけないのでしょうか。
糖尿病患者さんで経口薬で血糖コントロールが不十分で緊急性がある場合、またGLP-1受容体作動薬を入れても効果不十分の場合、インスリン導入が必要になります。
インスリンを始めたら、もうやめることはできないのかという質問もよくいただきますが、インスリンを始めることで、膵臓からインスリンが出なくなってインスリン依存状態になるということはありません。むしろ、体の外からのインスリンのサポートにより、高血糖毒性にさらされていた膵臓が回復し、インスリン分泌は改善することもよくあります。糖尿病薬は消化器症状を副作用として生じる薬も多いのですが、インスリンについては低血糖を起こさないようにコントロールできれば、消化器症状などの副作用はありません。血糖コントロールが安定したらインスリンを離脱することができる方も多くいらっしゃいますが、インスリンがやめられるかの判断については慎重におこなっております。一度離脱しても、またHbA1cが上がってきたら、また始めることもあります、といってから、インスリンを終了するようにしています。
ランタス、グラルギン、トレシーバなどの基礎インスリンは安全に使えるものですが、患者さんに適した量があり、どんな患者さんでも、増やしすぎれば低血糖の危険があります。空腹時の血糖値を見ながらインスリン量を調整しますが、日中の高血糖を、基礎インスリンで下げていくと、しばしばインスリンは過量になってしまい、朝食が欠食になったりしたときに低血糖を呈することがあります。某インスリンメーカーのMRさんが説明会で、基礎インスリンは体重×0.2(単位)が適量と言っていてびっくりしたことがありました。この量だと体の小さい日本人の多くの方が低血糖になってしまうので、インスリンの量は体重だけでは決められません。糖尿病学会年次学術集会で、基礎インスリン量について、92例で解析をした結果、一部の患者では、適切なインスリン量は体重×0.1(単位)を下回っており、なるべく少量から開始し、ゆっくり増量するのが適切ということを発表しました(抄録を下に示します)が、その場の先生も同じ意見の方が多かったです。インスリン導入は決めたら速やかに、しかし少量から初めてゆっくり増量することが必要です。
適切な量のインスリンが入っているかを見るのに、もっともよいのが、フリースタイルリブレPROです。500円玉の大きさの白い小さな円盤を皮膚に貼り付けることで、2週間の血糖変動をグラフ化できます。当院でも実施していますので、ご興味ある方は承ります。
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学会抄録:当院通院中の2型糖尿病患者における基礎インスリン量と体重との関係 2019 糖尿病学会年次学術集会