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インスリン導入したら、もう一生続けないといけないのでしょうか。

[2023.01.23]

糖尿病患者さんで経口薬で血糖コントロールが不十分で緊急性がある場合、またGLP-1受容体作動薬を入れても効果不十分の場合、インスリン導入が必要になります。

インスリンを始めたら、もうやめることはできないのかという質問もよくいただきますが、インスリンを始めることで、膵臓からインスリンが出なくなってインスリン依存状態になるということはありません。むしろ、体の外からのインスリンのサポートにより、高血糖毒性にさらされていた膵臓が回復し、インスリン分泌は改善することもよくあります。糖尿病薬は消化器症状を副作用として生じる薬も多いのですが、インスリンについては低血糖を起こさないようにコントロールできれば、消化器症状などの副作用はありません。血糖コントロールが安定したらインスリンを離脱することができる方も多くいらっしゃいますが、インスリンがやめられるかの判断については慎重におこなっております。一度離脱しても、またHbA1cが上がってきたら、また始めることもあります、といってから、インスリンを終了するようにしています。

ランタス、グラルギン、トレシーバなどの基礎インスリンは安全に使えるものですが、患者さんに適した量があり、どんな患者さんでも、増やしすぎれば低血糖の危険があります。空腹時の血糖値を見ながらインスリン量を調整しますが、日中の高血糖を、基礎インスリンで下げていくと、しばしばインスリンは過量になってしまい、朝食が欠食になったりしたときに低血糖を呈することがあります。某インスリンメーカーが、説明会で、基礎インスリンは体重×0.2(単位)が適量と言っていてびっくりしたことがありました。この量だと体の小さい日本人の多くの方が低血糖になってしまうので、インスリンの量は体重だけでは決められません。糖尿病学会年次学術集会で、基礎インスリン量について、92例で解析をした結果、一部の患者では、適切なインスリン量は体重×0.1(単位)を下回っており、なるべく少量から開始し、ゆっくり増量するのが適切ということを発表しましたが、その場の先生も同じ意見の方が多かったです。インスリン導入は決めたら速やかに、しかし少量から初めてゆっくり増量することが必要です。

 

学会抄録:当院通院中の2型糖尿病患者における基礎インスリン量と体重との関係 2019 糖尿病学会年次学術集会

【背景】2型糖尿病患者でインスリン注射を行う場合、近年持続時間の長い基礎インスリン製剤(グラルギンU100、デグルデク、グラルギンU300)が普及してきており、これら基礎インスリンの単位数の決定は、少量から開始し、自己血糖測定をしながら適切な用量を決定することが一般的である。また体
重×0.1 (単位) が開始用量の目安となるいう考えもあるが、すべての症例で安全に開始用量として用いることが可能かは十分に検討されていない。【目的】2型糖尿病患者における基礎インスリン量と体重との相関を調べる。【方法】対象は当院外来でインスリン治療中の2型糖尿病患者92名(男性72名、女
性20名)。1型糖尿病・膵性糖尿病・ステロイド糖尿病、混合型インスリンを使用中の患者は除外した。平均年齢 69±12歳、平均BMI 24.6±4.9 平均体重 66.8±14.1 kg、網膜症なし40名、SDR21名、PPDR18名、PDR9名、不明5名。体重と基礎インスリン量との相関、その他パラメータについて解析【結果】53例がbasalのみ、31例がbasal-bolusだった。基礎インスリン製剤はIGla-U100 54例、IDeg30例であった。体重(BW)と基礎インスリン量 (I)の散布図から基礎インスリンの単位数が44単位以上の外れ値2例を除外し、回帰直線を求めるとI=0.24×BW-4.8(r=0.41, p<0.001)となった。I=0.1×BWのラインを下回っていたのはBolusのみの8例を含め18例あった。【考察】回帰直線からは体重60kgの場合10単位、体重80kgの場合14単位に相当する。これは基礎インスリンの維持用量の目安になりうるが、ばらつきも大きく体重のみで基礎インスリンの維持用量を予測するのは困難である。また大部分の症例で基礎インスリンの量は0.1×体重(kg)を上回っていたが、一部の症例では基礎インスリ量はこのラインをも下回っていた。2型糖尿病患者に基礎インスリンを導入する場合、なるべく少量から始めるのが安全である。

 

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