アルコールの依存性
アルコールを作って飲むという営みは、人類が誕生したころからあったと考えられます。飲酒は、日常の文化であり、コミュニケーションツールとして正しく使えば非常に有用ですが、アルコールとの付き合い方は本当に難しいところです。アルコールには、強い依存性があるからです。
アルコール依存症は飲酒をする方であれば誰でも発症する可能性のある疾患と言ってよいと思われます。我が国でのアルコール依存症の患者数は少なくとも50万人以上と推定され、そのうち治療を受けている方はわずか5万人(5%)と言われています。アルコール依存症まで行かなくても、お酒で失敗したり、健康を害したりしたことのある人はもっと多いことでしょう。私が接したアルコール依存傾向の方には、とてもまじめな方が多かったです。それだけに、アルコールによる問題はいっそう解決が難しいと考えております。
少量の酒ならばいいのではないかという意見も一般的には根強くあります。よく引き合いに出されるのが、「酒は百薬の長」と言われる言葉です。しかし、この言葉については若干の説明が必要です。古代中国では、酒を政府が作って専売制にし、酒に税金をかけることにしました。そのため、皇帝がキャンペーンとして打ち出したのが、「酒は百薬の長」という言葉だったのです。この言葉には、中国4000年の医学の裏付けはなく、少量の酒が健康に良いという根拠は今のところありません。少量の酒であっても、毎日の飲酒を継続するうちに飲酒量が増えてゆき、アルコール性肝障害を起こすようになりますと、飲酒を減らす必要が出てきます。
当院では患者さんの健康状態をみて、アルコールをやめたほうがいいひと、制限が必要な人、禁酒をあえて勧めなくてもよい人に分けています。たとえばもう80代になっていて、毎日飲酒していても夜間の晩酌の範囲内で、現在健康状態に問題ないひとには禁酒を勧めておりません。
アルコールの付き合い方ですが、毎日の飲酒を避けることが最も大切で、いわゆる休肝日を設けることです。できれば週2日、少なくとも週に1日は飲まない日を設けていただきたいです。また、お酒は、健康な状態で飲むべきものであり、風邪をひいていたり、体調が悪い時に飲酒するのは避けましょう。
お酒の量についてご心配がある方は、診察室でなんでもお尋ねください。