若い女性に多い「中性脂肪の低値」について
最近では、企業が若年層にも健康診断を義務づけるようになり、20代の女性が健診で初めて血液検査を受けるケースも増えてきました。そこでしばしば見かけるのが「中性脂肪が低い」という検査結果です。特にBMIが17〜18程度の、いわゆるスリムな体型の方に多く見られます。
中性脂肪(TG)の基準値は一般的に50〜149 mg/dL。これを下回ると「低値:L」として青字で表示されることがあります。たとえば30mg/dLといった結果が出ると、「何かの病気では?」と不安になる方もいるかもしれません。
甲状腺機能のチェックは大切です
まず確認したいのは甲状腺ホルモン。若い女性ではバセドウ病(甲状腺機能亢進症)が比較的多く見られるため、TSH・FT3・FT4といった検査で代謝の状態を確認します。
甲状腺が正常であれば、多くの場合「体脂肪が少ないことによる中性脂肪の低下」と考えられます。中性脂肪は体脂肪から血液中に放出されるエネルギー源なので、もともと体脂肪が少ない人では当然低くなりやすいのです。
まれに先天的な脂質代謝異常症(アベタリポプロテイン血症など)もありますが、これは非常にまれです。
中性脂肪は心臓のエネルギー源
中性脂肪は分解されて遊離脂肪酸(FFA)となり、心臓の筋肉に取り込まれてエネルギーとして使われます。いわゆる「ベータ酸化」というしくみです。
脳は主にブドウ糖を使いますが、心臓は脂肪酸を優先的に使う仕組みがあり、エネルギー効率も高くなっています。そのため、極端に中性脂肪が低いと代謝に影響が出ることもゼロではありません。
結論として、BMIが17〜18程度の若い女性で中性脂肪が30台というだけなら、日常生活に問題が出ることはまずありません。
ただし、BMIが15を下回るようなレベルになると注意が必要です。たとえば神経性やせ症(いわゆる拒食症)では、心臓の筋肉そのものがやせ細り、心不全や突然死につながるケースもあります。
どこまでが安心ラインか?
BMI | 中性脂肪 | 判断の目安 |
---|---|---|
17〜18 | 30〜49 mg/dL | 体質的傾向。ほぼ問題なし |
15〜16 | 20〜30 mg/dL | 栄養状態やホルモンバランスに注意が必要 |
14以下 | 〜20 mg/dL | 危険域。医師の介入が必要 |
最後に
中性脂肪が低いというのは、「今ある燃料が少なめ」というサインにすぎません。
ただ、その人の体格や食生活によっては、単に燃費の良い体質である可能性もあります。
一方で、「冷えやすい」「疲れやすい」「月経が止まった」といった症状があるときは、数字以上に体が出しているサインを見逃さないことが大切です。少しでも気になることがあれば、医療機関で相談してみてください。