原発性アルドステロン症には2種類あり、治療法が異なります。
アルドステロンは、副腎から分泌されます。副腎を肉まんに例えると、皮の部分、それも一番外側の、アルドステロンというホルモンを産生する部分が腫瘍や過形成を起こして、アルドステロンが過剰に分泌された状態です。アルドステロンは、腎臓の尿細管からナトリウムを再吸収を亢進させますので、体液量が増加して高血圧になります。また、このチャネルではナトリウムの代わりにカリウムを排泄する作用がありますので、低カリウム血症となります。低カリウム血症でK 3.0mmol/Lを下回るようになりますと、筋肉の刺激伝達に影響が出ますので、脱力発作で脚に力が入らなくなり、立ち上がれなくなる方がおられます。
重症高血圧や脱力を伴う低カリウム血症を伴う原発性アルドステロン症は、医師国家試験に出てくるような古典的な原発性アルドステロン症ですが、その一方で、現在は負荷試験や副腎静脈サンプリングが発達したため、本態性高血圧症に近い、低カリウム血症の症状を伴わない程度の原発性アルドステロン症の方が最近は多く見つかっております。先に述べた、教科書的な古典的な原発性アルドステロン症(アルドステロン産生線種:APA)では、副腎摘出術を行わないと治癒できません。しかし、後者の特発性アルドステロン症と呼ばれる病態は、APAよりも多くの患者さんに認められるものであり、薬物治療で治療できます。セララやミネブロといった、アルドステロンが、受容体にくっつく前にブロックするお薬があります。これと、アムロジピンなどのカルシウム拮抗薬を併用するなどして、治療しております。後者の特発性アルドステロン症でも、K 3.2-3.5程度の症状を伴わない低カリウム血症はみられることがあり、やはりホルモンの過剰産生が影響しているということが推察されます。
セララやミネブロを使いますと、アルドステロンが受容体にくっつくのをブロックします。そのため、血圧が上がりにくくなり、低カリウムが改善します。実際は、反対にカリウムが上がることがあるので、定期的な採血をしながら調節が必要です。また、この薬によって、副腎の方はアルドステロンの生成が足りないと自覚するために、より多くのホルモンを作ることになります。しばしば、非常に高い値になりますが、血圧やカリウムがコントロールされていれば心配ありません。薬が効いているということです。
2021年からアルドステロンの測定法がクレイア法に代わり、アルドステロンの数値が全体的に以前の測定系よりも50pg/mlほど低めに出るようになりました。レニン・アルドステロン比のカットオフは200と変わらず、アルドステロン>60pg/mlで陽性となるようになりました(以前の測定系では120pg/ml以上)。このことにより、サンプリングなどの精査を行う症例がより厳しく選定されると期待されます。ただし、レニン・アルドステロン比 100-200でも、低カリウムや重症高血圧を伴うものは精査を検討することになっております。
高血圧のなかには原発性アルドステロン症が関与している症例は比較的多く見られます。当院では、本態性高血圧症、原発性アルドステロン症の診断と治療を積極的に行っております。